元ソニー社員”引き抜き”年収は1億円!? サムスンとLGの社員が日本企業凋落への本音を暴露!!

──今、国際的に有力な家電メーカーといえば、韓国のサムスンとLG電子という意見に疑いを持つ者はいないだろう。日本でも同社がリリースするスマートフォンが人気だが、韓国の両社社員は、ソニーとパナソニックの凋落をどう見ているのだろうか? 現地取材により浮き彫りにしていきたい──。

『サムスン帝国の光と闇』(旬報社)

 言うまでもなく、現在世界規模で家電シェアを伸ばしているメーカーといえば、韓国のサムスン電子とLG電子だろう。今やテレビ事業や半導体事業を中心に、破竹の勢いで世界シェアを伸ばしている。サムスンはスマートフォンの“ギャラクシーS”などでブランド力を向上させるヒット商品を生み出し、大量生産で数を売る価格競争に突き進んで、ソニーとパナソニックの業績を追い抜いた。

 まずサムスンの2012年1~3月期の売上高は前年同期比22%増の45・3兆ウォン(約3・2兆円)で、営業利益は同98%増の5・9兆ウォン(約4200億円)。スマートフォンが新興国を中心に売り上げを伸ばした。一方のLGは、売上高前年同期比7%減の12・2兆ウォン(約8700億円)、純損益は2400億ウォン(約170億円)の黒字で、3Dテレビなど収益性の高い製品の伸びが利益を支えた。

 こうした実績が報じられるたび、両社の強さを実感せざるを得ないが、実際に両社の社員は、ソニーとパナソニックの現状を、そして凋落の原因とその打開策をどのように見ているのだろうか? 彼らの本音を探るべく、本国のサムスンとLGの本社に勤務する、複数の韓国人社員に話を聞いた。

 まずは、サムスン・品質部門に入社して2年目、37歳の男性。ソニーとパナソニックについて聞くと、興奮した口調で語りだした。

「僕が学生の頃、ソニーの商品はまさに富の象徴でした。憧れの対象でしたし、優れた製品がとても多かったですよね。私はウォークマンシリーズを買い続けていましたが、新商品が出るたびに発見があって、とても楽しかったのを記憶しています。いつも誰かに見られるよう、目立つように持って歩いていましたよ。当時は世界のどの企業もこれ以上の商品は作れないだろうなって思っていましたが、今では自社製品が世界でシェアを伸ばしており、『何やっているんだ、ソニーもパナソニックも……』なんて思ったりもします」

 LG電子に入社して8年目、モバイル事業部、34歳の男性はこう語る。

「学生時代に日本の電子機器を使ったことがないという人が韓国にいるんでしょうか? ソニーとパナソニックの製品はそれくらい韓国でも圧倒的な人気とシェアを誇っていました。やはり日本の電子製品はすべての面で最高という印象で、品質もデザインも優れていましたよ。いまだに日本の技術力は優れていると率直に思いますし、油断はできないと感じます」

 やはり思った通りだった。韓国の30~40代は学生時代、電子機器と言えばソニーとパナソニックの製品が主流で、韓国企業は絶対に太刀打ちできないと思っていたというのだ。

 しかし、今ではその立場が逆転。そんなサムスンとLG社員だからこそ見える、日本企業の弱点があるに違いない。

 サムスンに入社して10年目、購買部所属の34歳の男性は、こう指摘する。

「ソニーやパナソニックなど日本の大手企業の業績悪化の大きな要因のひとつは、意思決定のスピードがとても遅いことです」

 ここで、同部署の40歳の男性に解説してもらおう。

「例えば、マンネリを打破しようと新しい変化を求める人間がいたとしても、上層部がそれを拒否する保守的な組織に見えます。実際はそうでないかもしれませんが、サムスンの社員のほとんどはそう感じていると思います」

 では、そのような印象は一体、どこからきているのだろうか。韓国の経済紙記者は、次のように説明する。

「サムスンは1990年代初頭まで、日本メーカーに追いつくことを目標としていました。ですが、93年に李健煕会長が『妻と子ども以外はすべて取り換える』と宣言し、世界を相手に大胆な構造改革を決行、競争をするための改革を始めたんです」

 サムスンの意思決定のスピードが加速化されたのは、これが始まりだったという。

「そこから組織内の変革が始まりました。サムスンは、グローバル化で勝ち抜くためにどうするかを検討した結果、00年にトップダウンをやめて、ボトムアップを採用しました。ボトムアップとは、下からの意見を上部へくみ上げたり、現場からの提案を採用することですが、サムスンでのそれは少し意味合いが違っていました。李会長は将来的な方向性だけを示し、具体的な実現方法については権限を委譲し、すべて下の者に任せることにしたんです。会長は100年先までの方向性を示すけれども、短期スパンの実現方法は、完全に部下に委ねています。仮に会長が最終的な意思決定をする場合でも、部下の判断を尊重しているので、そこで時間が割かれることはないそうです」(同)

 日本駐在歴のある韓国の全国紙記者は、こう分析する。

「日本の会社もボトムアップをしていると思いますが、サムスンとの大きな違いは“権限委譲”がなされていないことではないでしょうか。部下がアイデアを発案すると、周囲に根回ししながら意見を収集し、最後は会議で承認する。これでは遅いと思いませんか? 誰がどんな権限を持っているのかわからず、とてもあいまいなケースも多いような気がします。各段階で意見の合意が必要となるので、そこで意思決定のスピードに大きな差が出るのだと思います」

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