JALの事故放置、退職者量産で”ハゲタカ”企業再生支援機構が大儲け!?

『腐った翼―JAL消滅への60年』(幻冬舎)

 4月24日、植木義晴・日本航空(JAL)社長は定例会見で、2012年3月期決算(5月14日発表予定)について「予想として示している営業利益1800億円は、大幅に超えると推測している」と胸を張った。6月にも株式再上場を申請し、9月には再上場する見込みだという。

 だが、財務が「V字回復」するJAL内部で、事故や安全トラブルが頻発しており(別枠参照)、ある客室乗務員は、「現場の安全は置いてきぼりになっています」と訴える。社内では「JAL再生を手掛ける企業再生支援機構は、まるでハゲタカだ」との声まで上がっているという。

 JAL再建とはいったいなんだったのか? 乗客の命と安全にもかかわるこの問題を、再上場申請を前に検証してみたい。

 まず時計の針を、09年9月に戻してみよう。

 民主党への政権交代後、最初の国土交通大臣に就任した前原誠司氏。前原元大臣は、自民党時代のJAL対応を「白紙に戻す」と意気込み、かつてダイエーやカネボウなどの再建を手掛けた産業再生機構・元再生委員長である高木新二郎弁護士をリーダーとする、「JAL再生タスクフォース(以下、タスク)」を立ち上げた。タスクは徹底した財務・事業の精査(デューデリジェンス。以下、デューデリ)を実施し、法的手続きにはよらず、債務者と債権者との合意により自主的に負債を整理していく手続き=私的整理によって、JALを再生するプランをまとめた。だが、実際の再建に当たっては、この労作は一切活用されなかった。

JAL
日本航空。2010年1月、債務超過などを理由に会社更生法の適用を申請し、京セラ名誉会長・稲盛和夫が会長の職に就き経営再建に取り組んだ。翌11年3月に会社更生を終了。年間旅客数は全日空(ANA)に次ぐ4192万人(10年度)。現在、国際線289路線、国内線117路線を運航する。

 高木氏らがまとめたプランを前原元大臣は金庫の奥にしまい込み、タスクは解散。JAL再建の主導役は、債務超過企業の支援を行う官民出資企業・企業再生支援機構(以下、機構)の手に移り、機構はデューデリを一からやり直したのだ。高木氏が証言する。

「私たちの再建案と、その後に機構が中心となってまとめた会社更生計画(法的整理)の内容は、実は大筋で同じなんです。ただ、機構の会社更生計画のほうが『深掘り』されています」

「深掘り」の象徴が、高木氏らのタスク案8400人から1万6100人にほぼ倍増した人員削減規模だ。また、必要な運転資金も1800億円から6000億円にまで膨れ上がった。

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