経済アナリスト・森永卓郎が語る孫正義──自然エネルギーへの進出が最初の読み違いに?

経済アナリスト
森永卓郎(もりなが・たくろう)
1957年生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒。三和総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。オタク文化や玩具にも造詣が深い。

[ソフトバンクと孫正義の評価]
【○】携帯・ITに関しては、独特の鋭い嗅覚で、一歩間違えれば倒産しかねない大型の投資・買収を乗り切った。そのセンスはさすが。
【×】自然エネルギーへの進出に関しては、正義感に目が曇って、いつもの鋭い勘が狂っているのでは。初めての大失敗となる可能性大。

■「年収300万円時代」など、経済の動向を先取りして分析してきた経済アナリストならではの視点で、孫正義の虚妄を突く。

 ソフトバンクは、創業以来、時価総額の上昇をもとにしてM&Aを繰り返していました。90年代には、世界最大級のコンピューターの展示会だったコムデックスや、「PC WEEK」というコンピューター主要誌の出版元だったジフ・デービスを次々と買収。それが成功すれば、また時価総額が上がり、新たなM&Aに向かう。企業を拡大させているといえば聞こえはいいですが、自転車操業そのもので、実質的には本体の実業がない企業でした。砂上の楼閣を積み上げていたようなもので、危険極まりない経営をしていたのです。そこで危機感を抱いた孫氏は、彼の持つ資産すべてをかけて、ブロードバンド参入という大勝負にでました。ここで、虚業から実業への転換を図ったのです。ヤフー!BBがスタートしたのは01年ですが、同じ年に崩壊したITバブルの構造は、1920年代のアメリカで、自動車産業の発展と高速道路網の発達がバブルを巻き起こし、29年に崩壊したのと酷似していました。また、情報化の進展と、そのためのインフラストラクチャの構築というビジョンは、通産省(現・経済産業省)によって70年代以降一貫して唱えられてきたものです。そのような古くからある潮流のいわばビッグウェーブにうまく乗って、虚業から実業へと脱皮を遂げた。ここに現在のソフトバンクの成功へと至るターニングポイントがありました。 

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