──かつてNTTドコモでiモードを立ち上げ、現在はドワンゴ等の取締役として活躍する夏野剛氏。ケータイ業界を熟知し、孫氏とはドコモ時代からの付き合いだという夏野氏に、3つのキーワードでソフトバンク躍進の理由を紐解いてもらった。
慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏。(写真/田中まこと)
【KEYWORD 01】ボーダフォンの買収
夏野 まず、2006年に孫さんがボーダフォンを買収したのは、ものすごい大きな賭けでした。ボーダフォンは01年に日本テレコムを買収して日本へ進出しています。当時の通信業界といえば、iモードの躍進もあってドコモの独り勝ち状態。そんな状況下で、ボーダフォンなら世界標準の新しいテクノロジーで日本に競争をもたらしてくれると期待されましたが、そうはならなかった。そして5年後、ソフトバンクがボーダフォンを買収してから、その期待は見事に実現されたのです。官から頼まれたわけでもなく、自分で2兆円近い資金を調達してバクチを打った孫さんの行動は【詳細は「ソフトバンクと孫正義の正体【1】」参照】、もう暴挙と言っていいでしょう。