汐留にそびえ立つ電通本社ビル。コネ入
社も多いが人気は高い。
──電通が大手マスコミのタブーであることは、もはや説明不要だろう。ゆえに、その内実がマスコミで語られることもほとんどない。だが、そこにすら斬り込めるのが、経済小説の強みだ。
電通による「一業種複数社」の問題を取り上げた経済小説がある。逢坂剛の『あでやかな落日』【10】も、そのひとつだ。
「日本の広告会社の仕事はアメリカあたりと違って、すべて信義の上に成り立っている。つまり一業種複数社の仕事をしながら、競合メーカーの情報は絶対に漏らさない、という暗黙の了解がある」(同書より)
ところが、この信義に背くように、アウロラ電器の情報が外部に漏れ始める。どうも取引をしている広告代理店に問題があるようだ。そこで、アウロラは、一業種複数社を抱えるこの大手代理店を嫌い、業界第2位の代理店を選ぶ──。これは、1992年に日産自動車が、電通と手を切り、博報堂に代理店を乗り換えた騒動がモチーフになっている。