経済学者・堺憲一が読み解く、"経済小説の中の"格付け会社の実態とは?

【1】『その「格付け」に異議あり』著/江波戸哲夫 発行/徳間書店 発行年月/98年10月 価格/1680円(絶版/税込)

──「何かもっとエキサイティングに、格付けについてわかる術はないだろうか……」と思った読者諸兄にオススメしたいのが、経済小説だ。本稿では『この経済小説がおもしろい!』(ダイヤモンド社)の著者である経済学者・堺憲一氏に、格付け会社を描いた経済小説作品の楽しみ方を案内していただこう。

 経済小説の中で、格付け会社が主題になっている作品はさほど多くありませんが、いくつか面白いものがあります。まず、江波戸哲夫さんの短編『その「格付け」に異議あり』【1】が、私の知っている経済小説の中では一番古い作品です。1998年の刊行なので、格付けが今ほど人々の関心の的になっていない時期のものですね。主人公は、企業から依頼を受けて、その会社の格付け見直しに際してコンサルティングを行っている元証券マン。ある日、大手総合電機メーカーの重役から、自分の会社がネガティブな方向での見直しの対象になったので、どうにかしてほしいと依頼を受けます。引き受ける前に、格付け会社の感触を確かめようと主人公がいろいろ動いて話が展開していく……というストーリーです。

 こうした職業が実在するかどうかはさておき、格付けが下がれば企業は株価が下がったり金利負担が上がったりするわけで、そうした場合の焦りや苦悩がよくわかります。また、格付け会社の担当者が常に尾行を心配している描写が出てきます。要は、いろいろな会社から恨みを買っているから、いつ危害を加えられるかわからないと思って外を歩いている、と。格付けする側も、恨まれること覚悟でやっているという心情が、人間ドラマとして描かれています。

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2024.11.22 UP DATE

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