「東方神起」から分裂する形で活動をスタートしたジェジュン、ユチョン、ジュンスによる「JYJ」。だが、彼らの日本での活動には、彼らやファンに意志に反して、さまざまなトラブルがつきまとってきた。エイベックスと韓国の事務所との契約問題から端を発した騒動は、2011年、JYJのチャリティコンサートの実施に際して、国や自治体を巻き込み、ついには右翼団体が動くほどの物騒な展開となっていく。その裏では、誰がどんな思惑で動いていたのか。ノンフィクションライターの小野登志郎が、表に出ることがなかった裁判資料と独自取材から、初めてつまびらかにする──。
JYJの『JYJ Music Essay - Their Room
s(韓国盤)』
昨年の1年間、日本を代表するレコード会社や芸能プロを抱えるエイベックス・グループ(以下、エイベックス)は、韓国のアーティストグループ「JYJ」をマネジメントするC-JeSエンターテインメント(C-JeS)と、日本におけるJYJの興行を請け負ったザックコーポレーション(ザック社)との間で、熾烈な争いを繰り広げていた。(その争いの前段となる、両者が抱えた「JYJ」をめぐる契約問題は前回の記事を参照してほしい)
エイベックスは、JYJとの専属契約は自社にあり、無断で行われようとしているJYJのコンサート実施は不法であると主張。コンサート予定会場にも「会場を貸し出さないように」と執拗にプレッシャーをかけた。一方、ザック社はこうした抗議にも屈せず、2度にわたり、コンサートを強行。それゆえ、争いは法廷に持ち込まれた。まずは、この争いの内実を時系列で追ってみよう。
●2011年3月14日 C-JeSとザック社との間で、正式にコンサート契約を締結し、C-JeSとザックは、コンサートの売上から諸経費を控除した残金のそれぞれ2分の1ずつを利益とすることに合意
●同3月23日 エイベックス代理人からザック社へ内容証明でコンサート開催に対する抗議と警告
●同年3月28日 エイベックス、コンサート開催予定場所だった横浜アリーナへ通知文送付
●同年3月30日 横浜アリーナ社長名義でザック社へ「利用申込を承認することはできない」
●同年4月5日 チケット先行予約発売(完売)。この時点では会場は未定。
●同年4月5日 エイベックス代理人からザック社へ、さいたまアリーナでのコンサートに関する内容証明。開催の中止を求める
●同年4月11日 さいたまアリーナからザック社へ、会場利用を許可できない旨通知
●同年4月14日 さいたまアリーナHPにて「当初利用許可に向け手続きをすすめておりましたが、出演が予定されているアーティストに契約に関する問題が存在している中で、同社に対して利用許可を出すことが適切でないと判断いたしました」
●同年4月21日 ザック社、両国国技館へ会場利用申し込み
●同年4月 ザック社がエイベックスに対して右翼団体を動かす
●同年5月2日~5月6日 追加販売の予定が、サーバーダウンで延期
●同年5月10日~5月12日 追加販売
●同年5月10日 エイベックス代理人から、両国国技館を運営する相撲協会へ中止要請の内容証明