「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?
本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!
【今月の1本】
『ブラタモリ』
濱野智史[情報環境論研究者]×速水健朗[ライター]×宇野常寛[批評家]
──11月から第3期が始まった『ブラタモリ』(NHK)。タモリが古地図片手に街を歩き回るという、一見地味そうだが、足掛け3年続く人気バラエティだ。歩き回る中で街の文化的変遷や地形の変化が浮かび上がるのを楽しむこの番組から、新しい"街の楽しみ方"を考える。
宇野 今月の作品はNHKのバラエティ番組『ブラタモリ』です。08年開始の、タモリが古地図片手に都内近郊を歩く街歩き番組ですね。お2人はこの番組をどう見てますか?
濱野 僕はもともと、紀行番組が好きなんです。『世界ウルルン滞在記』(TBS)や『あいのり』(フジ)はよく観てましたし、今だと『世界!弾丸トラベラー』(日テレ)も毎週観ています。ですが、『ブラタモリ』は紀行番組というよりお勉強番組の色彩が強くて、スタッフが前もって準備するあまり、都市空間が与えてくれる「行き当たりばったり感」が希薄なのが残念です。都市って、要はそうした偶発的な出会いとかが面白いと思うんだけど、『ブラタモリ』は過去に遡行するので「へえ、昔はこんな場所だったんだ」というトリビアを得ることはできても、それ以上の驚きがない。よく比較される『モヤモヤさまぁ~ず』(テレ東)にしても、「この角を曲がったら、どんなおっさんがいるんだろう」というワクワク感がありますよね。だから『ブラタモリ』は番組としてよくできているとは思いますが、あまり身体的には好きじゃないんです。