『ワンピース』4000億円の功罪──角川書店と電子書籍で変わるマンガ業界の勢力図

──マンガは好きだけど、マンガ雑誌は買わない……こうした人が増えているためか、マンガ雑誌の売り上げが下がる一方、コミックスの売れ行きは堅調だという。そんなマンガ業界で台頭する新勢力や「自炊」「電子書籍」の広がり、そしてマンガ界が抱える真の問題点を、関係者らの聞き取り取材から浮き彫りにしてみたい。

 2315億円。これは2010年のコミック単行本の推定販売金額である。前年比はプラス1.8%で、増加に転じるのは実に5年ぶり。一見マンガ業界全体が活況を取り戻してきているとも思える数字だが、出版業界紙「新文化」の元編集長で、業界に詳しいジャーナリストの諸山誠氏は、この回復は、マンガ史上最大のヒット作といっても過言ではない『ワンピース』(集英社)1作による効果だと語る。

↑画象をクリックすると拡大します。
■コミックスとマンガ誌の推定販売金額の推移05年には、コミックスとマンガ誌の売り上げが逆転するなど、縮小を続ける市場において『ワンピース』が牽引したコミックスの売り上げは、横ばいの印象だ。(出版月報/2011年2月号より)

「これまで売れ続けていた『ワンピース』の単行本が、10年11月の60巻で初版が340万部、今年11月の64巻で400万部にも跳ね上がり、全巻累計発行部数は2億5000万部を記録。同時に50点以上もある既刊が増刷を重ねました。そのたった1作品がコミック市場全体に影響を与えているのです。一方で逆説的ですが、市場の規模が縮小してきたからこうした現象が起こっているのかもしれませんね」(同)

 だが、マンガ誌の売り上げは前年比でマイナス7・2%の1776億円で、実に15年連続のマイナスで、マンガ誌と単行本を合わせた売り上げは4091億円、前年比で見ると2.3%減少しているのだ。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.21 UP DATE

無料記事

もっと読む