(写真=田中まこと)
自らの記憶の一場面を、線香の微かな火を使って和紙を焦がすことで描き出すアーティスト、市川孝典。その静謐な作品からは意外な本人のヴィジュアルに、少しとまどった。長い金髪に、『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェルのようなアイメイク、パンキッシュなファッション。ヴィジュアルだけではない。少年時代のエピソードからして、ぶっ飛んでいる。
「小学校6年生の時かな、その時期、祖父母に育てられていたのですけれど、2人とも体調を崩していたこともあり、『日本の外にいってみよう』と思いついたんです。ちょうど、先輩の家が鳶職だったんでそこでバイトをして数十万円を貯めて。祖母が亡くなった次の日に羽田空港に行ったんです。カウンターにそのお金をぼんってだして、『ニューヨーク!』って言ったら、受付のお姉さんが、『それはここじゃないのよ』って成田空港まで連れていってくれました(笑)」