「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?
本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!
今月の一本
中森明夫[アイドル評論家]×真実一郎[ブロガー]×宇野常寛[批評家]
「会いに行けるアイドル」として秋葉原の常設劇場から活動を開始したAKB48。結成数年の不遇の時を過ごした後、完全にブレイクを果たし、現在ではもはや社会現象と化した彼女たちの3rdアルバム『ここにいたこと』。アイドル戦国時代の頂点に立つグループの成功の理由と今後の展開を、同アルバムから読み解く。
※本鼎談の収録はアルバム発売前に行われたため、参照した楽曲は収録曲16曲のうち、「少女たちよ」「Overtake(チーム A)」「君と僕の関係(前田敦子、板野友美)」「チャンスの順番」「Beginner」「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」「ここにいたこと(AKB48+SKE48+SDN48+NMB48)」の8曲のみです。ご留意ください。
宇野 『ここにいたこと』はAKB48(以下、AKB)にとって3枚目のフルアルバムですね。1枚目と2枚目のアルバムの間には、明確にコンセプトの差がありました。これは音楽批評サイトやAKBのファンコミュニティではよく指摘されていることですが、1枚目『SET LIST~グレイテストソングス2006-2007~』(08、デフスターレコーズ)はアイドルがアイドルオタクの男の子に向けた歌詞が多かった。続く2枚目『神曲たち』(10、キングレコード)は、「大声ダイヤモンド」に代表されるユーザーの目線に立った、"僕"という男の一人称で歌った詞が多い。つまり1枚目ではアイドルがファンに「あなたが好き」と歌い、2枚目では「一緒に盛り上げていこう」と歌っているわけです。ではこの3枚目でぐっと増えているのは、というと、自分たちAKBのことを自己言及的に歌い上げる歌詞ですね。