アメリカに担がれたTPPへの参加と"低い"日本の関税率【中編】

【前編はこちら】

「日本の関税率は高い」という数字のトリック

神保 要するに、アメリカは日本に物を売りやすくするためにTPPを使おうとしていると。

中野 農業改革とTPPを結びつける議論がなされていますが、これについても反論が山ほどあります。例えば、経済評論家の三橋貴明氏が面白いことを言っていました。前原誠司前外務大臣は「日本の一次産業はGDPの1.5%なのに、ほかの産業を犠牲にするのか」と言いましたが、自動車や家電を含めた耐久消費財の輸出額もGDPの1.5%なんです。つまり、日本は貿易立国ではない。また、経済には「デフレのときには生産性を上げてはいけない」という大前提があり、今のような状況で農業改革を行えば、タクシー会社の規制緩和でワーキングプアが溢れ返ったのと同じようなことが起こります。農業や外食産業が激烈な価格低下競争を行い、失業者とワーキングプアがたくさん出てくる。そうすると、日本国民全体の実質賃金も下がるでしょう。輸出産業は国民の実質賃金が低いほど、競争力が高まります。グローバル化とはそういうもので、企業の利益と国民の利益が一致しなくなったことが問題なんです。

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2024.11.25 UP DATE

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