「実事求是」の 東アジア・リテラシーとは?
高原基彰氏の著書『現代日本の転機』
高原 今回のデモについては、政権内部の権力闘争と関係があるとか、いろいろ報道がなされています。
中国の偏向報道といっても、若い世代はわかっていて、自国の情報についても、外国、特に英語圏のメディアのほうが正確だと普通に思っています。でも反中国的言説に対しては、突発的に反感が拡大したりもする。前述のように、複雑なんです。
よくある誤解として、完全に政府に洗脳された大多数の国民と、犯罪者扱いされている「反体制派」の2種類しかいないと思っている人が多いみたいですが、現実はまったく違う。確かに既存のマスメディアは、政府の情報統制下にあります。でもその内部でも、政治改革の進まない現状を憂う人は多い。官製メディアの記者が、匿名でネットに、表で書けないことを投稿するなんてことがたくさんある。一方で、「もっと改革は必要だが、急激にやって国が崩壊しちゃ困る」という意見もある。現体制が崩壊してもいいという「反体制派」と、「体制側」の二分法で考えると、その中間に幾層ものグラデーションがあるのを見逃すことになる。