第3回テーマ
「グローバリゼーションの中の国家」
[今月の副読本]
『社会学の根本概念』
マックス・ウェーバー/岩波文庫(72年)/441円
政治、経済、宗教などの分野で多くの社会学的研究を重ねてきた現代社会学の祖・ウェーバーによる"社会学上の概念"を定義づけた論文。研究者の間では未完とされているが、社会学上、貴重な文献である。
私が権力というものについて考えるようになったのは、もともと、国家の問題を通じてでした。私が学生だった90年代は、まさに国家批判やナショナリズム批判がさかんな時代で、人文思想の世界にいる人たちは、それこそ「猫も杓子も国家批判」という状態でした。そんな中でよく言われていたのは、「このままグローバル化が進めば、国境の壁は低くなり、国家はそのうち消滅していくだろう」ということでした。グローバル化によってヒト・モノ・カネが国境を越えてどんどん移動するようになれば、国家はその動きにのまれてなくなってしまうだろう、というわけです。アソシエーション論や国家民営化論が出てきたのもこの頃です。こうした知的傾向は2000年代前半まで続きました。