「なんか、人生が詰まってるなあって。監督も人間が好きな方なんで、人間くささがどこかに香る作品なんじゃないかな」
↑画像をクリックすると拡大します。(写真/早船ケン)
坂井真紀はそう言うと「ヘヘッ」と、本当にそんな少年みたいな笑いを漏らす。今にも舌を出しそうな、イタズラが見つかったような、そんな笑顔とは裏腹に、ここ数年、彼女が演じてきた役柄は時代性を濃く帯びたハードな女性像だったりする。映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』では壮絶に「総括」される遠山美枝子を、『ノン子36歳(家事手伝い)』ではやさぐれまくった元アイドルの出戻り三十路女を体当たりで演じきった。では、最新作『スープ・オペラ』で演じた主人公のルイは?
「幼い頃から叔母と2人暮らしの30代の図書館司書です。色気もなく欲もなく、ぼんやりと暮らしてる女子。ノン子とは、ぜんぜん対極にいるタイプですよね(笑)」
「ルイの人生に、大変なことなんかあるワケ?」女友達からあきれ顔で言われるほど波風の立たない人生を送ってきた彼女は、しかし物語の冒頭、叔母が家を出ていった瞬間から奇妙な運命に巻き込まれていく。
「だから今回は役作りというか、削ぎ落とすもののほうが多かったです。ルイって、みんながワサワサしてる中で『ストン』ってひとり、台風の目の中の静かなとこにたたずんでいるみたいな……わかりづらいですか?(笑)」