7年ぶりの新作で見えたシリーズ刷新努力の痕跡とその限界

「CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評」とは?

本誌連載陣でもある批評家・編集者の宇野常寛氏が主宰するインディーズ・カルチャーマガジン「PLANETS」とサイゾーがタッグを組み、宇野氏プロデュースのもと、雑誌業界で地位低下中のカルチャー批評の復権を図る連載企画。新進気鋭の書き手たちによる、ここでしかできないカルチャー時評をお届けします。見るべき作品も読むべき批評も、ここにある!

──低迷する映画業界よ、こんな時代だからこそ攻める映画を! 保守的になりがちな映画業界に喝を入れる映画評。映画を見る前にこれを読むべし!

今月の1本
『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』

『踊る大捜査線3』公式HPより。

速水健朗[ライター]×松谷創一郎[ライター/リサーチャー]×宇野常寛[批評家]

"国民的シリーズ"『踊る大捜査線』の7年ぶり3作目の劇場版が公開されている。テレビドラマの放映開始から13年、2度の映画化に度重なるスピンオフ作品の製作と、プロジェクトとして肥大化の一途をたどってきたシリーズの最新作を、観る者はどう受け止めるべきなのか?

速水 映画『踊る大捜査線3』(以下『3』)が7月3日に公開されました。98年『踊る1』も03年『2』も超満員でしたが、今回は苦しいですよね。ファンとして言い訳すると、このシリーズ、初めから大作志向ではなかったんです。97年のテレビシリーズは視聴率も平均18%程度で、当時のドラマの中では地味だった。それが、放送後に口コミで火がついた。なので、映画ありきの企画ではなかったんですよ。でも映画が大ヒットしたので、ファンと一般大衆の両方にウケるものを作らなければならなくなる。そもそも『踊る』シリーズの良いところは、「引用」です。プロデューサーの亀山千広さんや脚本の君塚良一さんも刑事ドラママニアで、例えばテレビシリーズの冒頭は『太陽にほえろ!』のパロディで、青島がポイ捨てした煙草を拾っている。引用の作法は『3』でも踏襲されていて、引っ越し作業のシーンで、ドラマ『24』でお馴染みのマルチ画面のやりすぎ版として、200画面くらいに分割して収拾がつかなくなるっていうギャグとかをやってる。ただ、それを読み解いて満足するファンは1万人であって、1000万人の大半に届くものは作れていないのは、反響を見てもわかります。

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