──IT企業が莫大な利益を生むようになった今、国家との間でさまざまな利権関係が生じている。NTTデータ、富士通などの旧来型のITゼネコンから、ソフトバンク、楽天などの新興巨大企業まで、利権構造の発生の仕組みから官僚の天下り方まで、徹底解剖!
中野雅至氏の著書『「天下り」とは何か』
2005年頃から活発化している、インターネットプロバイダなどに対するフィルタリングの導入論議や、06年のライブドア事件における国策捜査批判、あるいは携帯電話用周波数の割り当て問題などなど、近年、国家とIT業界のせめぎ合いに関する話題が絶えたことはない。そうした話題の豊富さが示すのは、IT市場の規模やIT業界の社会的影響力の大きさが、今や、政府にとって決して無視できないレベルに達し、重要視すべき案件になっている、ということだろう。
となれば、逆説的ではあるが、他の業界がそうであるように、国家とIT企業の間にも、何かしらの利権構造が生まれていて不思議はない。国内だけで12兆円を超える巨大市場を目の前にして、官の側がただ手をこまねいているはずがなく、他方、IT企業側も、事業規模の拡大に伴い、官との関係構築の必要性を強く感じているはずだからだ。そこで小誌は、官民癒着の代表格といえる「天下り」に特に注目し、IT業界における天下りの実態を探ってみることにした。
その前に、まずは天下りについての基本を押さえておくとしよう。まず、天下りとはどう定義され、民間へ天下る場合、どのような規則が設けられているのだろうか? 『「天下り」とは何か』(講談社現代新書)などの著書を持つ、兵庫県立大学大学院の中野雅至教授に解説してもらった。