ソフト化された自主映画が放つ過激さの追体験と当時の空気──井土紀州[シナリオライター・監督]

【選者】井土紀州[シナリオライター・監督]

30年近いときを経てもなお、観るものに衝撃を与える『闇のカーニバル』。これはその1シーンにすぎないが、その苛烈さは十分に伝わってくる。

 自主映画の中から"ヤバい"DVD作品を選ぶっていうテーマは結構難しい。そもそも自主映画は、ソフト化を前提として撮られるものではないんです。それが、最近ソフト化されるケースが多い。フィルムならではの衝撃が失われる一方で、自主ならではの過激さが時代を超えて体験できる利点もある。そんな奇妙なねじれが生まれている状況だからこそ観るべき過激な作品を選びました。

 まずは『闇のカーニバル』(81年)【1】。話のスジらしいスジはないんだけど、映画を撮るってことは犯罪を犯すようなことなんだという強烈な印象を突きつけられる作品。実際に新宿の紀伊國屋の前に無許可でクレーン車で乗り入れたり、電話ボックスを破壊したりという無茶な撮影をしているんです。今じゃなかなかできないことだけど、だからこそ映像から作り手の熱がじりじりと感じられる。また、江戸アケミや遠藤ミチロウらミュージシャンが出演していて、当時の東京のカウンターカルチャーとその空気も肌で感じられます。今観ても、商品としてどうだとかテクニックがどうだという意見が挟めないほど、光景として圧倒されるはず。

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2024.11.21 UP DATE

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