──80年代後半の映画不況のさなかに生まれ、誕生から20年がたっている"Vシネマ"。三池崇史監督や清水崇監督、役者なら哀川翔や遠藤憲一などの人材を輩出してきたこの業界だが、近年はかつてのような勢いは見られない。レンタル事業も落ち目の今、Vシネに未来はあるのか?
ド迫力のパッケージが並ぶ、レンタルショップのVシネマコーナー。『ミナミの帝王』は人気シリーズだ。
レンタルビデオショップを覗くと、今なら、製作費200億円を投じたハリウッド超大作『アバター』のDVDがずらりと並ぶ一方、奥へと進み、アダルトコーナーに入る手前に、異様な空気を放つコーナーがあることに気づく。任侠もの、闇金融もの、刑務所ものなど裏社会を扱う、いわゆる"Vシネマ"と呼ばれるオリジナルビデオ作品の世界だ。劇場公開される"表"の映画に対し、「知る人ぞ知る」"裏"の世界だが、哀川翔アニキをはじめ、"Vシネマの帝王"竹内力、さらに遠藤憲一、白竜、小沢仁志・和義兄弟らコワモテな男優たちのいかついパッケージが、群雄割拠する戦国武将のようにひしめいている。
Vシネマとは、もともとはヤクザ映画、アクション映画を得意とした東映から89年に生まれたオリジナルビデオ作品のレーベル名。90年代初期、哀川翔主演作『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』など、東映Vシネマの作品は寡占状態だったこともあり、毎回3万5000本以上の好セールスを記録。以後、多くのメーカーが続々と参入し、"Vシネマ"という言葉は広くビデオ作品全般を指すようになった。そして『静かなるドン』(91~)『ミナミの帝王』(92~)などの人気シリーズが生まれるが、90年代後半には出荷数は頭打ちとなり、販売本数1万本でヒットと呼ばれるように。ここ数年は5000本でヒット扱いになるなど、年々出荷ラインが下がってきている。