──近年、内部からの情報提供により、イタリア・マフィアの大物が立て続けに逮捕されているという。かつては鉄壁の絆を誇った世界最強の地下組織に、今、何が起こっているのだろうか? マフィアと政治・経済のつながりを歴史的にひも解き、その理由を探ってみたい。
マフィア映画の金字塔『ゴッドファーザー』。
イタリア・マフィアといえば、まず我々の頭に思い浮かぶのが『ゴッドファーザー』などの映画で描かれる凶暴性や"ファミリー"の絆だろう。非情な暴力と潤沢な資金で権勢を振るう一方、家族を大切にし、貸し借りを重んじ、仲間を守るために沈黙を押し通す──。
そんなイタリア・マフィアの状況が、ここ数年で変化しているという。それを端的に表しているのが、相次ぐ大物たちの逮捕だ。2006年4月には公的事業へ食い込み、43年間の逃亡生活を送った大ボス・ベルナルド・プロヴェンツァーノ、07年にはその後を継いだサルヴァトーレ・ロ・ピッコロ、09年には麻薬取引の帝王と呼ばれたサルヴァトーレ・ミチェリの身柄が拘束された。
ここまで立て続けにマフィアの大物が逮捕されるのは、1世紀半というマフィアの歴史上、初めてだという。イタリア・マフィアの近現代史に詳しい、イタリア研究家はこう語る。