刑事裁判の不完全性と社会の敵が持つ浄化作用【中編】

前編はこちら

国民のカタルシスとして作用する社会の敵のつくり方

神保 しかし、そのようなイメージのレベルで、事件にかかわる報道がガラっと変わるというのも困ったものですね。さて、検面調書の内容と、法廷での証言の食い違いについて、弘中さんはどう捉えていますか?

弘中 非常に問題視しており、法廷でも取り上げています。食い違いの理由はいくつかあり、人によって違います。例えば、「検察官が嘘をつくはずがない」という思い込みがあり、検察官から「あなたは記憶にないと言うが、事実はこうなんですよ」と言われると、「そうなんだ」とその場では納得してしまうケース。ほかには、マスコミ報道の影響を受け、「自分は忘れていても、報道が正しいのだろう」というケースもあります。もっともひどいのは、検察官への供述から法廷の証言まで一貫しているにもかかわらず、検察官が調書に書いてくれないケース。つまり、検察官に対し、事実を述べるか述べないかではなく、検察官が作った調書にサインするかしないかという選択しかない、という場合があるんです。

神保 前福島県知事・佐藤栄佐久さんに関連する汚職事件の捜査では、関係者を公職選挙法などで軒並み引っ張り、「知事に対して不利な発言をすれば、保釈してやる」という、いわゆる人質司法が問題になりました。今回は、そうした形跡は見られますか?

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.21 UP DATE

無料記事

もっと読む