──奇形者/障害者を意味するフリークス。彼らに好奇の目を向けるのは道義にもとる気がしつつも、多くの人たちが強い興味を抱いてしまうのも事実。そもそも彼らと私たちは何が違うのか? ここで紹介するフリークス写真集を通じて発見するのは、あなた自身の姿かもしれない。
【1】『Diane Arbus』
フリークス、あるいはアウトサイダー。いわゆる社会のマイノリティにレンズを向けた写真と聞いて、ダイアン・アーバスの写真集『Diane Arbus』【1】思い浮かべる人は少なくないはずだ。映画『シャイニング』(同作の監督スタンリー・キューブリックは、カメラマン時代にアーバスから直接指導を受けたことがあるという)にも引用されたあの有名な表紙イメージは、写真とマイノリティの関係を考える上での出発点となる1枚であるといってよいだろう。
アーバスが、熱心にフリークスたちを撮り始めたのは1950年代後半から。裕福なユダヤ人家庭で育ち、10代にして自らを華やかなファッション写真の世界へと導くパートナーに出会った彼女は、その不足のない人生そのものをコンプレックスとし、恵まれた人間としての役割を演じて生きる自分を疑い続けた。そんなアーバスにとって、フリークスとは自分の奥底に広がる暗がりを生まれながらにして外見に備えてしまった者、いわば彼女自身の姿をネガとポジのように反転した存在だったに違いない。こうしてアーバスは、巨人症、小人症、両性具有者といったさまざまなフリークスたちに好奇や記録のための視線とはまったく異なるアングルを見い出していく(真偽は定かではないが、見世物小屋の小人と寝たというエピソードも伝えられている)。またその一方で、それを上回る数の健常者を、それぞれの虚栄と狂気を暴くかのようにグロテスクに写し取り、写真の上で"正常―異常"の二元化をいっさい無効にしてみせたのだ。