親方と力士の本当の関係

 このところ、相撲界では、世間の目が土俵の外のドタバタばかりに向いていて、相撲をこよなく愛する俺としては悲しいばかりだ。

 俺以上に相撲を愛し、現役時代は大横綱・栃錦として、引退後は年寄・春日野を襲名し、日本相撲協会理事長として、長らく相撲の黄金期を支えてきた俺の師匠(おやじ)は天国でどう思っているだろうか?

 最近の秩序の乱れた騒動を見ていると、ついついおやじとのことを思い出すときが多くなる。おやじは、横綱としての品格、親方としての威厳や優しさなどを備えた人物で、俺にとっては実は父親と同じぐらい大きな存在だったのだ。

 少し前にここにも書いたが、現役の横綱として山形に巡業に来ていたおやじに、「力士になってみるか?」と、俺が声をかけられたのが中学1年のとき、昭和34年のことだった。

 翌年の初場所直前には、俺の父親宛に一通の手紙が届いた。そこには「初場所を見にきてほしい」と書かれ、2万円が同封されていた。今でいうと数十万円の価値はあろう。横綱から、相撲に招待され、しかも大金まで送られてきたとあって、俺が住む小さな町が大変な騒ぎになったのを覚えている。

「光弥が、栃錦に見初められたそうだ」

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2024.11.22 UP DATE

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