日本で文豪と呼ばれる多くの作家が、精神疾患を抱えていたという報告がある。そのうち、専門家の間で精神を病んでいただろうと言われているのが、夏目漱石と芥川龍之介だ。
文豪及びその作品における精神分析を試みた本は数多くある。吉本隆明・森山公夫『異形の心的現象―統合失調症と文学の表現世界』(批評社)は、漱石や芥川などの諸作品を通して、統合失調症の影響下にあるとみられる表現世界を具体的に明らかにする対談だ。日本を代表する評論家・吉本氏と、統合失調症の新たな治療を展開する精神科医・森山氏が、精神病の本質に深く切り込んで論じている。文学の精神分析を語るうえで外せない一冊だろう。