売り上げはメディアに乗らず原点回帰で取り戻せ!

 ラーメン長者に成り上がる店主たちがいる一方で、一時の繁栄に乗り切れず、短命に終わる店も増える昨今。「ラーメン店は職人であると同時にビジネスであるべき」という経営コンサルタントの木村氏に儲かる店の条件を語ってもらった。

 次から次へとオープンするラーメン店。やはりおいしい商売なのだろうか。数々の店をプロデュースし、売り上げを3倍以上にしたなどの実績を持つ、ラーメン業界専門コンサルタントの木村康宏氏に聞いた。

──ラーメン業界の現状はどうですか?

木村 儲かってる店と儲からない店、完璧に二極化しています。儲からない店には、ずっと儲からないタイプと、一時期儲かったけれども今は儲からなくなったタイプがあり、後者はメディアで騒がれたときの客数が1日500人、今はその10分の1という店もあります。

──その原因はなんでしょう?

木村 メディアのウケを狙ってマーケティングをしている店は短命化する傾向があります。メディアはとがった商品を好み、それを見た人も「今までのラーメンとどう違うんだろう」と期待する。それが無難な場合は「この程度か」とブログで叩き、逆に期待にこたえることを狙った商品を出せば、飽きられるのも早い。

──最近話題のラーメンは高くて、なかなか食べる気もしないですしね。

木村 でも以前に比べて原価がかなりかかっているので、適正な価格ではあるんです。ラーメン店はいい材料を使ったらそのまま価格に反映させるという理論がまかり通っています。でも、消費者にとっては味だけではなく、価格や利便性も大切。今後業界としては、現在提供している店が少ない、500~600円の価格帯が狙い目でしょうね。

──ちなみに、売り上げが好調になると店舗を増やす店も多いですが、それは得策なんですか?

木村 支店は上手に経営をしないと儲からないので、3~4店舗展開して、経営が悪化するケースが多いです。品質にブレも発生しやすくなるので、それをウリにしている店にとっては致命傷になることも。系列店の品質を安定させるため、メーカーに特注したスープを使う場合もありますが、ここで少しでも妥協があれば、集客力が落ちることがほとんどですね。

──一部のラーメン店では、店員に手取り40万円といった高額給与を保証しています。この額は本当に可能ですか?

木村 可能は可能です。繁盛店の店主さんだと高級外車に乗ったりと、ラーメンドリームを実現したような方も多いですから、従業員にもそれだけバックしようという店も多くなっています。ただ、一般的には、その地域の普通の会社員と同じくらいの給与です。

──今の時点で、木村さんが個人的に「経営的に成功している」と思うお店は?

木村 「蒙古タンメン中本」。量や品質のバランスも良く、従業員も大事にしています。厳しい経済状況ですが、こういうお店が増えて業界を盛り上げていけるよう、私ももっと、お手伝いしたいですね。

木村康宏(きむら・やすひろ)
船井総合研究所チーフコンサルタント。これまで200社、1000店以上のラーメン店の支援に携わる。年間800杯以上のラーメンを食べ、各地域に根差した味の研究を欠かさない。著書に『1日300人が行列する人気ラーメン店のつくり方』(同文舘)。

フェラーリだって夢じゃない!木村氏が指南する儲かるラーメン店の3カ条

一、初期投資すべからず

初期投資をたくさんかけるより、売れる仕掛けに投資をすること。一時期は2000万、3000万かけたかっこいい店がはやりましたが、今はそういった店は「その経費がラーメンの価格に乗っている」と消費者に思われがち。店にお金をかけるよりも、お客様にお金をかけている店こそが繁盛している。

二、お客様目線で精進すべし
初期投資を減らした分、商品に金をかける。そのとき心がけるのは、1・3という数字。同じ価格で量を1・3倍にする、あるいは同じ品質で1・3分の1の価格にするといいでしょう。たとえば、500円で出すものを390円にするとか。それより安いと、逆に売れないんです。

三、地域密着を徹底せよ
中国に「近き者喜べば、遠き者来たらん」という言葉があります。某店は地域の方に配慮して、雑誌には「11時開店」と掲載し、実際は9時から開けることで、地元の人が並ばなくても入れるようにしていたそうです。そういうことをさりげなくやってるお店は、ずっと繁盛しています。


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