評論家にかなり左右されますが……、もとはみんな、ただのラーメンマニアですよ。
テレビや雑誌などであたかもなんでも知っているかのように意見する評論家。はたして彼らの味覚は正しいのか?一部でこんな噂が聞こえて来た──。
いまや国民食とまでいわれるラーメン業界周辺には、ご存じ通り、"評論家"と呼ばれる人たちが存在している。彼らの主な活躍の場は、実食レビューの執筆やメディアへの出演、ラーメン博のようなイベントのプロデュースなど。「神の舌を持つ男」と呼ばれている石神秀幸氏や、雑誌を中心に活躍しているはんつ遠藤氏などが有名だが、近頃ではテレビ番組から、"農水省の官僚"というキャリアを持った「ラーメン官僚」なる人物まで出現する、人気職(?)なのだ。そんな中、こうした鋭い味覚や知性を持つ、新鋭のラーメン評論家の台頭に危機感を抱いている古参評論家がいるという──。WEBや書籍などで古くから活躍しているC氏だ。
記憶力の良さでは定評のある彼だが、実は業界内では「味覚音痴」としても有名。食材の分析はおろか、多量の化学調味料ですら識別できない、と嘲笑されているのだ。さらに、金銭的な授受こそないとは思うが、新規出店を控えたラーメン店の出入り業者と口合わせをし、味の良し悪しに関係なく自分のレビューで高評価を下しているという疑惑も。メディアを通じて彼の支持を見聞きした人が店に殺到し、業者も潤う……というカラクリだ。
またC氏は、彼の門下生の評論家たちと共に、たいしてはやってもいないスタイルのラーメンを各メディアに積極的に取り上げて、ブームをつくろうとしているという。近年一部で話題になった、「ベジタブルポタージュ」や「鶏白湯」も、彼らが作り上げた虚像という噂もあるのだ。
情報飽和状態の現代社会。公平な情報を得るためにはせめて、評論家選定試験などを設ける必要があるのかもしれない──。
(文/安楽由紀子、秀也)
(絵/師岡とおる)