昨今のテレビ不況は、民放キー局だけでなく、地方局にまで波及していた。08年度決算報告で、全国の地上波民放テレビ127局のうち、47%にあたる60局が最終赤字を計上。原因はもちろん、視聴率の低迷やネットメディアの台頭に起因するCMスポット売り上げの激減だ。
別名ローカル局とも呼ばれ、限られた地域で放送事業を行うテレビ局のこと。主には、日本テレビ系列、TBS系列、フジテレビ系列、テレビ朝日系列に分けられる。
特に悲惨なのがTBS系列局。社長の肝煎りでスタートした『総力報道! THE NEWS』をはじめ、TBS本体の視聴率が全日にわたってダウンしているため、系列局にもそのシワ寄せがきているというのだ。同系列の北海道放送の局員が嘆く。
「北海道地区の視聴率、ホントにサイアクですよ。なにせ『総力報道〜』でも1%に満たないことがあるんだから。この夕方時間帯で強いのは、札幌テレビ放送(日本テレビ系)の『どさんこワイド』。ローカルネタに特化していて、道民の心をギュッとつかんでいるんです。合間に入る全国ニュースで数字が若干落ちることもあるくらいですよ。出演者の大半が局アナなので、コストパフォーマンスもいい。ウチも早くああいう番組にシフトしたいんですが、お上(TBS本社)の建前上、NET番組を放送しないといけないので......」
そして経費削減が叫ばれる現在、北海道の各テレビ局で懸案事項になっていることがある。それは、大泉洋や鈴井貴之らが所属する事務所「オフィスCUE」のギャラ問題だ。北海道テレビ放送の関係者が解説する。
「オフィスCUEは、東京でいうところのバーニングプロダクションやジャニーズ事務所みたいなもの。数字の取れるタレントが多いので、とにかく権力を持っているんですよ。しかも、北海道はかなり特殊で、テレビ局がキャスティングするというより、同事務所が番組にタレントを割り当ててくる。ギャラも向こうの言いなりなので、ほかのタレントさんはオンエア1回当たり数万円のギャラで済むのに、同事務所タレントは最低10万円から。本来、ギャラの減額をお願いするか、出演タレントのリストラを断行したいところなんですが、長年の慣例で、そうもいかないんです」
花形の職業である女子アナを見ても、悲惨な現状が浮かび上がってくる。キー局、準キー局以外の小さなローカル局は赤字経営が続いているため、最近は女子アナを社員採用していないというのだ。東北地方にあるテレビ局の女子アナの話。
「私が入った時から、契約社員としての採用に変わったんですよ。年俸制で大体400万円前後。もちろん、ボーナスもつかなければ、残業代もありません。基本的に3年契約で、上司が言うには『おそらく更新されないだろう』とのこと。今はどこの局も同じ状態で、移籍しようにもできないし、大きな事務所に入らない限りフリーになっても仕事がない。だから、同期や後輩はみんな婚活に必死(笑)。楽天の選手と結婚するのが夢ですね」
さらに年俸が低い地方局の場合、衣装が自前のことも多いためか、バイトに精を出す女子アナも。中国地方のあるテレビ局の20代女子アナが告白する。
「ローカル局とはいえ、顔バレが怖いので、お水の仕事はさすがにできない。なので、声で勝負できる時給900円のテレアポのバイトをヒマな時間にやって、お小遣いを稼いでいますよ。まさか、憧れの職業に就いて、こんなことをするとは思わなかった......」
民放テレビ局としては、過去に一度だけ京都放送に会社更生法が適用(94年)された前例がある。このままの状態が続けば今後も倒産する地方局が出てくるかもしれない。
(岩友江里)