謹慎解除後すぐに、次々にCMにも復帰した草彅
先月24日、4月に起こした"六本木全裸騒動"でCMを降板していたSMAP・草彅剛が、地上波デジタル放送の普及推進キャンペーンのメインキャラクターとして復帰することが発表された。このニュースは、騒動の顛末を追いかけてきたメディア関係者のみならず、広告業界でも驚きを持って受け止められた。何しろ4月の逮捕時には、鳩山邦夫総務相(当時)が草彅を「最低の人間だ」と批難するなど、地デジ加入推進キャンペーンを行ってきた側は怒り心頭、一説にはCM違約金は数十億に上る……などという話まで飛び交っていたのだ。
イメージ商売のタレントにとって、スキャンダルはご法度。しかも、それらが隠し通せずに表に出てしまうこととなったとき、もし当人がCM出演やなにがしかのイメージキャラクターを務めていれば、その企業、あるいはタレントをキャスティングした広告代理店にまで余波は及ぶ。これによってCMを降板させざるを得ないといった損害を企業側が受けたときに、タレント側が支払うのがCM違約金だ。
ところが、賠償金たるこの違約金、実際に支払われるケースは意外と少ないのだという。今回の草彅の一件も、影響の大きさから言っても支払いは免れられないだろうと思われたが、フタを開けてみれば、地デジ大使については「違約金はゼロ、出演は無償」と報じられている。広告代理店関係者は、その理由をこう説明する。
CM違約金
違約金とは「債務の不履行があった場合に支払う旨を、債務者が債権者にあらかじめ約束した金銭」(『三省堂 大辞林』による)。草彅について、今回の件で違約金の支払いは、地デジのみならず、ヤマサやトヨタレンタリースなどに対してもゼロ円だったと言われている。
「スポンサー企業がタレントと契約を結ぶとき、契約違反発生時の明確な額面というのは明記しないことが多いのです。『何か問題があればいくら払います』とは書かず、『双方協議の上、支払います』とだけ書いておく。逃げ道を残す契約にしておくんですね。それで、そのタレントに何かあれば、代わりに同クラスのタレントを同じ事務所からキャスティングする。それで違約金が発生しないようにするんです。事務所はもちろん、企業側にしても、一度決まったCMのプランなどを全て白紙に戻すのは避けたいですからね」
また、スポンサー企業がスキャンダルを嫌がるかというと、最近は必ずしもそうではないのだという。
「今はちょっと名のあるタレントがスキャンダルを起こすと、すぐにニュースサイトに掲載されて、それがYahoo!トピックスに並び、広く浸透します。その際に使われるタレントの写真が自社商品の発表会見のものだと、宣伝になりますからね。企業によっては喜ぶところもありますよ。もちろん、怒鳴り込んでくる企業もありますが……」(ネット広告代理店社員)
宣伝方法も多様化し、PRも一筋縄ではいかなくなってきた現在、多少ネガティブな話であっても、宣伝になるのであれば安い話ということか。
とはいえ、スポンサーの責任者たる大臣に暴言を吐かせるほどの怒りを買った草彅の場合、違約金を支払わずに済んだのは、事務所側にとっては実にラッキーな話。2011年に本当に地上波デジタル放送へ完全に切り替わるのかは正直疑わしいが、日本の全家庭で地デジが見られるようになるまで、がんばってタダ働きしていただきたいものである。
(小宮明浩)