「政治と宗教は不可分だ!」 動き出した幸福実現党の怪

大川隆法
1956年、徳島県生まれの宗教家。"仏法心理"を説くべく、86年「幸福の科学」設立。91年、教団の内部事情や大川総裁の経歴を掲載した「フライデー」に対し、激しい抗議行動を展開して一躍有名に。来春には、「幸福の科学学園」(中学・高校)を開校予定。

 8月第1週か、第2週か。

 首相の決断に国会が揺れ、解散総選挙に向けて各党の動きが最終局面に入った政局。だが、現時点で最も大々的に街宣を行っている政党は、自民党でも民主党でもない。

「国民の皆さん! 我々は次の総選挙で、必ず第一党を獲得します!」

 5月下旬から全国各地で、休日のたびに声を張り上げるその候補者たちののぼりには、「幸福実現党」と染め抜いてある。そう、宗教団体「幸福の科学」を母体にする政党だ。

 彼らが政党発足の記者会見を行い、世間を驚かせたのは5月25日。現在の党首は、総裁・大川隆法の妻・きょう子氏が務め、人気マンガ『金田一少年の事件簿』(講談社)作者のさとうふみや氏らが立候補を表明、小選挙区300区と比例43区すべてに候補者を擁立するつもりだという。

 気になる同党が掲げる政策の柱は、「核施設を先制攻撃し、北朝鮮のミサイルから国民の安全を守る」「移民1億人受け入れによる3億人国家」「大減税による消費景気」という3本だ。
そして、誰もが懸念する日本国憲法第20条に抵触する"政教分離"については、「政治は宗教と独立して離れて存在するものではない」(大川総裁)と強弁。彼自身はあくまで「創立者」としてメディアに登場することはないが、信者を集めた集会では、その意気込みを力強く語っている。

「宗教家なんて馬鹿なんです。命取られること平気でしますから。しかし私は人が不幸になるのを黙って見ていられないんですよ。宗教とは、正しさのために命をかけるものなんです!」

 こうした動きに、90年の衆院選におけるオウム真理教による政界進出の試みと、その挫折後の事件を重ね合わせ、危険性を指摘する向きもある。この総裁主導の突然の選挙戦には、信者の間でも「なぜ今」「信者に負担をかけてまで政界進出する必要性はどこにあるのか?」と動揺が広がっている。だが、ある自民党関係者は「以前から政界進出の動きはあった」と言う。

「幸福の科学はこれまで、自民党候補者のボランティア支援をしてきました。自民にとってその組織的動員力は魅力で、前回の衆院選では丸川珠代らが支援を受けたといわれています。安倍政権までは、良好な関係だったんです」

 そんな蜜月関係は、政権交代後すぐに決別の方向へ動いた。今回の選挙の布石ともいわれる大川隆法の著書『朝の来ない夜はない』が、これまでとは比較にならない大々的な広告キャンペーンを開始したのが昨年末。ちょうど麻生政権発足直後だ。

「両者の間で個人的な何かがあったのかも。『クリスチャンの総理と気が合わなかった』とも言われますが(笑)、先日の集会では『総理は三流の政治家』と一刀両断していました。しかも政界再編が迫る中、勝負に出るなら今だと判断したんでしょう」(政治記者)

 教団の信者数は公称1000万人だが、実際はその10分の1以下ともいわれる。ただ、100万票集まれば、比例区なら議席獲得も十分可能。実際、3月の千葉県知事選では、森田健作現知事を支援し、動員力を見せつけた。

「同じ集会で、民主党の小沢代表代行に対しては『政治家として一定の評価はしている』と批判のトーンも控えめでした。選挙後、自民と民主で票が割れた場合、幸福実現党がキャスティングボートを握る可能性も、否定できないですね」(同)

 はたして、この国にはもうひとつ、宗教団体を支持母体とする"物申す政党"が誕生してしまうのだろうか? しかも、建前上でも政教分離を謳わない、トンデモ極右思想を持つ政党が。その答えは、正確な教団信者数とともに、開票日に明らかになる。
(軽枝 漣)

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