デフレ戦争を生き抜くためには、 海外進出かPB充実か

 物の売れないこの社会状況にあって、小売企業は今、"デフレ戦争"を生き抜こうと必死になっている。そんな中、業界では時価総額でセブンアンドアイホールディングス(以下、7&iHD)がトップに君臨し、製造型小売業のファーストリテイリング、家電販売のヤマダ電機がそれを追い上げているというのが現状だ。特にヤマダ電機は近年、医薬品や食料品も扱う一大ディスカウントストアと化しており、電化製品の販売業の枠を飛び出した目覚ましい成長を見せている。

「7&iHDの一番の強みは、マーチャンダイジングの巧みさ。顧客が本当に欲しいものを提供する力が抜群です。ヤマダ電機は商品の仕入れ力と、機が熟してからの都市部進出によって伸びたと考えられます」(東京工業大学院理工学研究科経営工学専攻・鍾淑玲准教授)

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 一方、イオンやジャスコなどの総合スーパー(GMS)は苦戦が続いている。イオンについては、業界内時価総額で3位と、相変わらず決して悪くないように思えるが、ここにはカラクリがあるという。

「郊外型のGMSはショッピングモールを開発してテナントを入れているため、不動産収入があります。それにより一見売り上げが高いように見えるのです。本来の総合スーパーでの売り上げは減っています。イオンに限った話ではありませんが、GMSは最も売れないとされる衣料品を大幅に見直し、食品のみに力を注ぐなど強い分野に特化する必要があるでしょう」(同)

 実際、イオンは今年1月の時点で、前年比147億円の減益を発表。そのうち半分の78億円が、GMS事業の減益である。同社に限らず、今後小売企業が生き残りを図るには、具体的にどのような策が必要なのだろうか?

かつては業界の雄であった百貨店の凋落はいうまでもなく、一時は郊外型ショッピングモールの出店ラッシュに沸いたGMSももう落ち目。そこに台頭してきたのが、電化製品の販売店であるヤマダ電機。いまや小売企業は、本来の業態の垣根を越えた競争にさらされているのだ。

「付加価値の高い商品を売り出し続けることと、海外展開を視野に入れることです。あるいは、トップバリュなどのように、企業自体にすでにブランド力があれば、プライベートブランドを積極的に展開し、価格面で優位に立つのもひとつの手ですね。日本国内のマーケットは、すでに飽和状態。同社のように、国内で基礎体力を保ちつつ、同時に海外へ視野を広げる必要性があります。これからますます企業間の統合、再編、そして国際化が進んでいくでしょう。7&iHDやヤマダ電機のように、時代に対応して変革し続ける企業はこれからもどんどん強くなり、それに乗り遅れた企業は淘汰されていきます」(同)

 店頭商品の回転から物流にかかる時間、そして顧客のニーズへの対応まで、速度がことのほか重視される小売業界では、柔軟性のない企業が勝ち残るのは難しい。現時点での勝ち組・7&iHDやヤマダ電機がそのまま生き残り、後手に回ったGMSと、その他百貨店が苦境に立たされている最大の理由はそこにあるだろう。ともあれ、どこの会社が生き残ろうと、欲しい商品を適切な価格で提供してくれれば、消費者はそれでいいのだが……。
(朝井麻由美)

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