学会員、党員、番記者に聞く公明党"禁断"の選挙戦略【1】

――繰り返される政教一致議論や学会メンバーによる熱心な選挙活動など、公明党と創価学会の関係は、一政党とその支持団体という表現ではおさまらないほど密接だ。そこで、都議会選、総選挙を前に、"公明党と選挙"について関係者に話を聞いた──。

[座談会出席者]
A......37歳、製造業勤務。学会2世だが、入信は社会人2年目に同僚に誘われたことがきっかけ。ニュース番組は欠かさず見ている自称「政策通」。
B......45歳、自営業。大学時代に友人の紹介で入信。現在は、娘が女子部の部長で活躍し、信仰を深めていることから、活動をめぐって叱咤激励される毎日。
C......29歳、商社勤務。3年前に彼女に誘われて入信。やっと政治活動と学会の関係が見えてきたところ。


A 今回は、7月12日投開票される東京都議会選、そして都議会選後に実施されるといわれている総選挙での、「学会員による公明党の選挙運動」というテーマなんだけど(苦笑)。やっぱり総選挙は都議選の後になりそうだ。

B 公明党の予定候補者は決まっているけど、都議選まではまであと2カ月もあるからまだそこまで盛り上がっていないし、その後に行われる総選挙については選挙活動の動きすらはっきりとは見えていない。でも、地方に住んでいる(学会員の)メンバーの話だと、「都議選にそなえて、5月は行けるだけ東京に行き、東京の知人や友人に会って候補者を推薦してほしい」というお願いが、信濃町の学会本部から出ているそうだ。

C 一応、"お願い"ってコトですから、「東京には知り合いがいません」といえばそれまでだし、電話での活動でもいいという話です。でも、メンバーの中には東京に友人がいなくても、とりあえず上京し、ガソリンスタンドのバイトやファミレスの店員にまで"お願い"する猛者もいますよ(苦笑)。

A この時期の座談会【註1】では、公明党や創価学会の理念を相手に伝える"対話"した人数の報告があるからね。我々はその人数から票を読むんだけど、"対話をした人数の1割が票になる"というのが基本認識。だけど、縁もゆかりもない人にお願いしたって、間違いなく票には結びつかない。

B とはいっても、地道に票に結びつく行動を起こさないと。何しろ、都議選はほかの地方選挙にも影響を与えるから、「首都決戦・本陣の戦い」と学会では位置づけられている。「東京で惨敗しているから、地方も厳しいかも」という空気になるのは、やはり怖い。婦人部【註2】のメンバーなどは、東京の地図を大きく引き延ばして、対話数をかわいい動物のマークにして貼り込むなど、各地区で活動の多さを競っているようだ。

C こうした対話は、基本的に民主党や共産党など、公明党と敵対している政党の支持層相手に行うと"金星"として喜ばれますよね。

B でも、ある地域で民主党支持の自治会長のところへお願いに行った壮年部【註3】メンバーが大ゲンカになったそうだ。なんでも玄関先で民主党・小沢一郎代表と公明党・太田昭宏代表の悪口を互いに言い合ったとか。

A やはり相手は選んだほうがいい。深夜に選挙活動の電話をしたメンバーがいて、公明党本部に苦情が来たケースもあったし。こっちもやりすぎなんだけど(苦笑)。

C 僕はまだメンバーになって日も浅いんですけど、昔と比べて選挙活動って変わりました?

B 1970年代の頃はキツかったはずだ。当時はまだ公明党の認知度が低いためか、「選挙期間は会社を休んででも対話に励め」というのが、学会員の間でも美学として蔓延していた。だけど今は選挙期間中でもなんでも「社会生活優先」というのが、学会の基本路線だからね。このあたりはバブルがはじけた90年以降、変わってきたところだ。今どき「選挙中だから残業しない」ではすぐ解雇されてしまうから当然だけど。

収賄に使い込み......増える悪徳公明党議員

A さて、今回の都議選候補者なんだけど、手堅く票が見込めるのは、もちろん太田代表がいる北区だな。で、注目はやはり目黒区だろう。ここが一番苦戦するとされているからね。過去の統計上、目黒区は民主党の当選率が非常に高いし、06年、政務調査費の不正流用で公明党の全区議6人が辞職したこと【※4】が尾を引いている。

B 苦戦するのも当然だろう。そもそも、不正がバレて772万円を目黒区に返金したそうだけど、その使途も、自家用車の車検やカーナビの購入、研修費と称したバス旅行代など、聞いてあきれるものばかり。

A バカ息子のくだらない暴行事件【※5】でイメージを悪くした北側一雄公明党幹事長の秘書・斉藤やすひろ氏が出馬するのも不安要素だ。学会内では、早くも斉藤氏は「落選確実」との見方が出ている(苦笑)。いずれにせよ、問題の多い議員が増えてきたのは事実だからな。

B 少し前には、学会員絡みの事件としては、東京都足立区で、公明党区議の元副議長が、保養施設の業務委託をめぐり、あっせん収賄【※6】で逮捕された。

A 目黒区議員といい、足立区の副議長といい、そもそも、あんなヤツを議員に推薦してはいけなかったんだ。だいたい公明党はこれまでの体質として、頭が良いけど組織運営上チームワークに欠ける人物を、安易に議員を推薦してしまう。

C 現在、公明党に投票する学会員というのは、意外に少なくて"良くて6割"といわれています。残りの4割は、他党に投じるか、投票にすら行かないというわけですね。そうなったのも、議員に問題があると思いますよ。普段は会合などめったに出ないくせに、選挙近くになると唐突に座談会などにこまめに顔を出すような調子のいい議員が多すぎます。

A あげくの果てに、「今回の選挙はお世話になります」の挨拶もない。そんな議員は見切って当然だ。戸田城聖二代目会長は、そうした忘恩の輩を絶対に許さなかった。「政治家は死にもの狂いで働くべきだ。支援者に対して、真心ある態度で、恩を返すべきだ」と厳命なされた。

B 池田大作名誉会長も「働かない議員はどうぞ、落選させてください」と堂々と言っていたことがある。

C そもそも1958年、戸田先生が「青年は政治を監視せよ」と遺言されたことが公明党立党のきっかけで、それは「民衆のための政治」という党の精神に受け継がれています。なので、公明党議員であろうと、連立している自民党議員であろうと、民衆の目線を失った議員に協力する必要なんかありませんよ。

やっぱりイケメンが人気?女子ウケ必至の人気党員

B では、その自民党だけど、麻生太郎首相の評判は、イマイチ学会員の間では高くない。でも、「高速道路1000円」や「定額給付金」、「子育て支援金(就学前の第2子に3万6000円支援)」も、公明党の言いなりに右から左へと流しているから、公明党にとっては使い勝手がいいんだろう。

C 一方、小池百合子さんなんかは、婦人部のウケはいいようです。

A それは、池田先生が常に「これから世界は女性の時代だ」と発言しているからだろう。しかし、ウチの太田昭宏代表とはソリが合わないと思う。風見鶏みたいに小沢(一郎民主党代表)さんについたり、小泉(純一郎元首相)さんについていたり、太田さんはこうした理念がない政治家を嫌うからね。

B 公明党員でいえば、太田代表は、やはり神崎(武法公明党顧問)さんや浜四津(敏子公明党代表代行)さんに比べ現場学会員の支持が高い。やはりはっきりした物言いがその理由なんだけど、先のお二方は遠回しの表現をするから、党内の調整役として縁の下の力持ちというポジションと見られているんだろう。

C 一方、ここに来て人気が急上昇しているのが、歯切れのいいコメントでテレビへの出演も多い高木陽介選対委員長。太田さんも元公明新聞の記者だし、高木さんも元毎日新聞の記者なんだけど、新聞記者っていうのは、論調がはっきりしているのかもしれないですね。そういえば、女子部では、イケメンで清潔感がある遠山清彦前参議院議員が圧倒的な人気を誇っているようですね。

A 知名度で言えば、国土交通大臣まで務めた冬柴鉄三さんが有名ドコロなんだけど、意外に人望は薄い。やはり、大臣時代、道路行政団体の「カラオケ機器購入」【※7】とかを野党に突かれて歯切れが悪かったからだろう。あれには太田代表が厳しく叱ったと聞いている。

B ともあれ、都議会選と解散総選挙で公明党は「休業手当て等の9割を国が出す」という雇用調整助成金制度【※8】を中心とした福祉政策をマニフェストとして掲げている。

C まあ、実態のない社員の欠勤をでっちあげることも起こりうるから、そういった問題もはらんでいますが......。そういえば民主党も自民党も議員の世襲制度に焦点を当てているようです。

B その点でいえば、公明党は立党以来、世襲が禁止。議論されればされるほどウチは有利なんだけどね。


[用語解説]

【註1】......ブロック単位(町内ごとの組織)で、定期的に催される会合。

【註2】......既婚女性や中年女性によって構成される創価学会の地区組織。

【註3】......中高年男子で構成される創価学会の地区組織。

【註4】......06年11月、政務調査費の不正使用が発覚し、目黒区の公明党所属の6議員全員が辞表を提出した。同区議会では、議員1人当たり、月額17万円の政務調査費が認められていた。

【註5】......07年12月に「週刊朝日」(現・朝日出版)が報じた事件。大手広告代理店電通の100%子会社である電通東日本社内で07年11月末、ひとりの若手社員に対する懲戒処分が発表された。処分の中身は軽い部類の「譴責」で、処分の事由は「酒の席で同僚に暴力を振るった」としているが、その当事者こそ、公明党・北側一雄幹事長の長男だった。

【註6】......05年4月、東京都足立区の保養施設「湯河原あだち荘」の業務委託契約をめぐり、不正な金銭受諾があったとして、公明党区議で元副議長の忍足和雄があっせん収賄で逮捕された事件。

【註7】......08年2月、道路特定財源を主な原資とする道路整備特別会計から、国土交通省が89~06年度に職員の娯楽用としてマッサージチェアやカラオケセット、スポーツ用具などの購入費を781万円支出していたことが判明。これを野党に追求された冬柴国交大臣(当時)は、しどろもどろの回答をして、「歯切れが悪い」と党内外の叱責を受けた。

【註8】......景気の変動、産業構造の変化等に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業等(休業及び教育訓練)又は出向を行った事業主に対して、休業手当、賃金等の一部が国から助成される制度。

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