──インディーズでものすごく売れていたのに、あえてメジャーデビューしたのはなぜなんですか?
ジュイ バンドを始めようと思ったとき、プロとしてやっていきたいというのがあったんですよ。メジャーとインディーズの区別がつかなくなってきた時代だけど、やっぱりメジャーっていうフィールドでやってみたいっていう思いが強かったんです。
──収入だけ考えれば、インディーズのほうが身入りはいいですよね。
ジュイ (笑)。僕自身はそういうのはあんまり考えなかったです。生活を成り立たせていこうっていうよりは、頂点を目指したい。現実よりも、理想のほうが勝ってしまったんです。
──明確に目的意識を持って、全員が「売れるぞ!」って気持ちでやっているんですか?
ラメ 同級生が集まった、楽しくやろうよって感じのバンドじゃないんで、目的はひとつですよね。
ジュイ みな、バンドをやるために東京に出てきたんです。
テロ 東京人が誰もいないですよね。
──「オカルトロマンス」がコンセプトとあったんですが、それはいまでも?
ラメ まあ、当初の意味合いとは変わってきているかもしれないですけど、「オカルトロマンス」っていう言葉に対する見方は、僕らからすると変わらずにいます。
──ラメさんは、最初から女形だったんですか?
ラメ 初期は違いました。だから、最初にやろうと思ったときはすごく勉強しました。
──メイクや衣装を、ですか?
ラメ メイクやキャラの先駆者たちを、見よう見まねで自分で消化して頑張りました。
──参考にしたのは誰ですか?
ラメ 僕の中で、ゴスロリの先駆者といえばマリスミゼルのMana様かなって思っているんで、「ゴシック&ロリータバイブル」(インデックスマガジン)とかを見て参考にさせてもらいました。
──インディーズだと、ファンとの隔たりがあまりない気がするんですけど、勘違いしてストーカー化したファンはいませんでしたか?
ギル ......男の人だったらいるよね。
ラメ ライブが終わって大阪へ移動して泊まって、明けた日の朝にホテルを出た瞬間「サインしてください!!」って。ずっとついてきてたんですよ。インパクトありましたね。
──いつも来てる人なんですか?
ラメ ライブでいつもいます。
──どのあたりで観てるんですか?
シュン けっこう前(笑)。
──ルックスはアキバ系?
ラメ 30代くらいで、ガテン系(笑)。
ギル 高速でずっと追いかけられたことがありました。追い抜いて追い抜かれてを何回も繰り返してるうちに、あのお客さんだとわかって(笑)。
ラメ パーキングでフェイントかけて、その場は逃げたよね。
──変わったプレゼントや高価なプレゼントをもらったことは?
テロ びっくりしたのは、折りたたみのチャリンコ。「これで秩父まで行ってください」って書いてあって(笑)。こんなに小さいチャリンコで秩父まで行くには、何回こげばいいのか(笑)。
──女性ファンが、ヌード写真に住所と携帯の番号を、とかは......。
ギル そんなのないですよ(笑)。スーパーの袋に「カレーライスを作ってください」って野菜だけ渡されたことはありました。カレー好きなんて言ったことないんだけど(笑)。
──雑誌で好きなブランドを言ったりすると、ファンからもらえたりするっていうじゃないですか。「クロムハーツが好き」って言えば翌週届くとか。
ラメ そんな思い通りにはならないですよ(一同爆笑)。でも、最近テロが思い通りになってるかな(笑)。
──ファンに貢がれてるんですか?
テロ 「ゲーム機、何か持ってますか?」って聞かれて、「プレステ3は持ってない」って言ったらもらえました。ソフトも入ってました。
──全然いい思いしてるじゃないですか!
ゔぃどーる
(写真右より)Dr.テロ/Gt.シュン/Vo.ジュイ/Gt.ギル/Ba.ラメ 02年結成、コンセプトは「オカルトロマンス」。08年にはシングル「Blue star」がテレビ番組『ギョーテック』(テレビ朝日)のエンディングテーマとなり、インディーズながらオリコン初登場で21位を獲得。演奏力、歌唱力共に定評があり、インディーズV系シーンでは超有名なバンドだったが、ついに今年2月、シングル「Puzzle ring」でメジャーデビューした。V系バンドの中では、ビジュアルと実力とが伴っている数少ないバンドのひとつ。メンバー全員がブログを毎日更新中!!〈http://www.vidoll.jp〉
<メジャーデビューアルバム>
『エソテリック ロマンス』
(発売/クラウンレコーズ)
ルックスから勝手に想像して、コテコテのV系だと思ってました(失礼!)。いい意味で暗さ&スゴみがなくて、純粋に「いい曲」のオンパレード。ツインギターの場合、片方がリフ、片方が空間系って感じが多いんだけど、彼らの場合、+シンセがところどころ入っているせいか、V系嫌いでもすんなり聴けちゃいます。90年代歌謡ロックに代表される、シャ乱Qやビーイング系のテイストもあって、アラサーアラフォー世代のハートもがっちりつかむ予感ね。
Kei-Tee的インタビュー後記
「ヴィドールやるため東京に出てきました」。「仲良しが集まって作ったバンドじゃない」。久々に気合の入った言葉を聞きましたよ。ルナシーだってエックスだって、バンドの中心メンバーは同級生だったりするのにね。生まれも育ちも違う人間が、「ヴィドール」をやるために地方から東京に集結したんだから、ほかのバンドはこの時点で気合負けしちゃうでしょう。なんというか、志が高い!「練習嫌い」と言いながらズバ抜けて演奏がうまいし、ルックスの平均点がほかのV系より高い気がするし、メジャーでも売れることは約束されてると思うわね。「ルックスはホスト並みにいいけど、演奏はテキトー」ってバンドが多い中、向かうところ敵ナシ!
<著者プロフィール>
1973年、東京都生まれ。"神に最も近い男"角川春樹の娘でもある鬼畜ライター。根っからのビジュアル系好きで、元バンギャルにして元アイドル。現在1歳の愛娘の子育てに奮闘中。自著に、自薦他薦セレブのインタビュー集『セレブの血』(ワニマガジン)がある。公式サイト