「ジャンプ」の裏側を描いたノンフィクション「少年リーダム」

ジャンプ黄金時代を築いた男。

 マンガ不況が訪れて久しい。相次ぐコミック誌の休刊やメガヒット作の不在など、"マンガ大国"日本の衰退を心配する声は年々高まるばかり……。

 そんな中、マンガ界の復活を期してスタートするのが、最大発行部数653万部まで上り詰めた80年代「週刊少年ジャンプ」(集英社)黄金期への道筋を描くノンフィクション連載「少年リーダム ~友情・努力・勝利の詩~」だ。掲載誌は、あの時代を駆け抜けた元「ジャンプ」5代目編集長・堀江信彦氏が創刊した「週刊コミックバンチ」(新潮社)。その堀江氏自らが担当編集となり、当時の舞台裏を編集者側の視点から綴る、熱いドラマを贈る。

「物語の焦点は、『ジャンプ』が一時的に、部数を落としていた1980~83年くらいにかけて。落ち目だった雑誌をもう一度上向かせるには、ものすごいパワーが必要なんだ。だからこの時期には、いろんな工夫や仕掛けをしたし、精神的にも一番充実したドラマが詰まってる」

 確かに、「復活」という課題はマンガ界の現状にもピッタリだ。作画は、当時『よろしくメカドック』を連載していた次原隆二氏。彼の起用もまた、作品の重要なポイントになっているという。

「次原が上京した82年に編集部員になった架空の新入社員の目線から、見せていくことにした。次原は決して4番打者ではなかったけど、渋い打率や打順で、常に『ジャンプ』の傍らにいた男なんだね。だから、彼が当時を語るのに一番適役。天の時と地の利と人の和が、ちょうどマンガ家生活30周年を迎える次原に合ったんだよ」

 なるほど、80年代「ジャンプ」時代の面白さはわかる。でもそれって、当時読者だった団塊ジュニア世代限定の後ろ向きなノスタルジーにすぎないのでは? それがマンガ不況を破る普遍的なメッセージにどうつながるのか?

「確かに今のマンガの不調には社会的な要因もあるけど、半分は人災。要はマンガ家と編集者がサボっている。たとえば、マンガのコマ数ひとつ取っても、今はキャラクターの情感や状況を伝えたりするためのコマが削られていて、粗筋に挿絵を入れただけのものになってしまっている。そういうことを一番うるさく言ってた時代のドラマを作ることで、もう一度原点を伝えたいんだよ、自戒を込めて」

 はたしてその志が、今のマンガ界にしっかりと伝わるか否か。まずは「バンチ」4月24日発売号での連載開始に注目だ!(中川大地)

『少年リーダム ~友情・努力・勝利の詩~』
「週刊少年ジャンプ」草創期を記録した元3代目編集長・西村繁男のノンフィクション『さらば、わが青春の「少年ジャンプ」』を原作に、黄金期に向かう80年代前半のドラマをマンガ化。4月24日発売の「週刊コミックバンチ」21・22合併号から連載スタート。右の絵は、本作に登場するキャラクターたち。原作/西村繁男 漫画/次原隆二 発売/新潮社

ほりえ・のぶひこ
1955年熊本県生まれ。79年、集英社に入社し、「ジャンプ」編集部で『北斗の拳』の原哲夫や『シティハンター』の北条司を担当。93年に5代目編集長となり、95年には歴代最高部数である653万部を達成。00年の集英社退社後、01年に株式会社コアミックスを設立、新潮社から「週刊コミックバンチ」を創刊する。

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