──ジャニタレみたいにイケメンでもなければ、若くもないのに、なぜか今、若い女性を中心に絶大な支持を得ているEXILE。この人気の背景には、一体何があるのだろうか?
08年末、念願だった日本レコード大賞の大賞に輝くなど、この年、計15の栄冠を勝ち取り、国民的音楽グループへと成長したEXILE。同年は"パーフェクトイヤー"と銘打ち、ベストアルバム3枚の累計販売数が415万枚を突破、5大ドームツアーで40万人の動員を記録したほか、自らを「総合エンターテインメント集団」と位置づけて「劇団EXILE」の第2回公演、「月刊EXILE」の創刊、アニメ『エグザムライ』の制作に本格的に乗り出すなど、その勢いはとどまるところを知らない。
そんな中、3月1日にEXILEの弟分的グループ「J Soul Brothers」(EXILEの前身であるJ Soul Brothersの名前を受け継いだ、事実上2代目)のメンバー7人を吸収し、新たに14人編成で活動することが発表された。こうしたモー娘。的な増員を受けて、所属レコード会社エイベックス(レーベルはリズムゾーン)の松浦勝人社長のブログが、「悲しくてEXILEの曲が聴けません。元のEXILEに戻してください」「J Soulを返せ」といった反対派ファンの書き込みによって大炎上したことは、記憶に新しい。
「増員の意図としては、『自身の引き際を考えての第一歩』とリーダーのHIROが語っています。次の若い世代に夢を与え続けるべく、EXILEを永く存続させるための判断だったと。HIROはもう39歳ですし、パフォーマー(ダンサー)の平均年齢は33・8歳ですからね。過去、TAKAHIROやAKIRAが途中加入したときもファンの反発があったので、今回も本人たちはある程度覚悟していたようです。ただ、読みが甘かった。発表直後は鬼のようにメディアに出まくり、"火消し"に奔走していましたね。今回の件で、一時的にファン離れも起こっていると聞きます」(音楽業界関係者)
インテリヤンキー HIROのやり手ぶり
近い将来、HIROが脱退する日が"第三章"の始まりだという見方が強い。
そもそもEXILEは、90年代初めに「Choo Choo TRAIN」で一世を風靡したダンスグループ・ZOOの元メンバーであるHIROが、「再び武道館に立ちたい!」という信念のもと、01年に誕生させた(前身は初代J Soul Brothers)。当初はATSUSHI、SHUNのヴォーカル2人と、HIRO、MATSU、USA、MAKIDAIのパフォーマー4人だったが、06年3月にSHUNが脱退。その後、パフォーマーのAKIRAとヴォーカルのTAKAHIRO(オーディションで1万人の中から選出)が新たに加わり、7人で再スタートを切った。今では、それぞれが役者やDJ、デザイナーなどソロ活動もしている。ちなみに、SHUNがいた時期までを「第一章」、それ以降を「第二章」とメンバーは呼んでいる。
そして、07年には『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)の企画での、ナインティナイン岡村隆史との期間限定ユニット〝オカザイル〟が話題となり、お茶の間での認知度もアップ。「オカザイル効果で公式携帯サイト『EXILE mobile』の会員が急増し、今では40万人以上もの会員を抱える」(音楽雑誌編集者)という。
「浜崎あゆみや倖田來未の不調、大型新人・GIRL NEXT DOORへの莫大な初期投資もあり、昨年、エイベックスは倒産寸前の状態にあったそうです。その窮地を救ったのが、EXILEの躍進だった。その年、彼らがベストアルバムを異例の3枚もリリースしたのも、エイベックス側の都合があったと聞きます。売れない時代を支えたHIROの恩人で、EXILEが所属する会社LDH(Love+Dream+Happinessの意味。社長はHIRO)の会長でもある松浦社長の頼みとあっては、断れないですから。ただ、エイベックスとしても、なぜ彼らがここまでの人気を獲得したのかきちんと把握できていないようで、最近になって慌てて調査し始めているとか(笑)」(芸能プロマネージャー)
エイベックスでさえこうなのだから、本誌読者に至ってはなぜ彼らがこれ程までに人気なのか、サッパリだろう。
では一体、どんなファンが支えているのか? 前出・業界関係者が語る。
「ほかの男性アーティストに比べて男性ファンの比率は高いものの、10〜20代半ばの女性が多いようですよ。特に地方のヤンキー層から支持されているようです。音楽業界では"地方のヤンキーに受け入れられないと、ミリオンヒットは出せない"というのが定説で、浜崎あゆみなんかもその例ですね。実際、コンサートのチケットも、都内より地方公演のほうが早く完売しているとか。公式ツアーグッズも、ヤンキー仕様のデザインにしていると聞いたことがありますね。一説には、グッズの総売り上げが13〜14億円といわれていますから、相当なものですよ」
「月刊EXILE」の編集長はHIRO。今回、版元に読者層を問い合わせたが、期日までに回答はもらえず。
また、芸能評論家の宝泉薫氏も、「田舎のガテン系ヤンキーやアベックが支持しているのではないか」と分析する。
「ヤンキーは『ビッグになる!』的なサクセスストーリーが好きなので、そういう"物語"を自ら作り出しているEXILEに共感するのでしょう。また、ヤンキーは常に自分の力を誇示する傾向があります。今回の増員に関する報道もそうでしたが、HIROが日刊スポーツのようなオヤジ向け媒体でも連載を展開するなど、メディアを使って自ら話題性をゴリ押しし、自分たちがいかにビッグな存在であるかをアピールする姿勢なんかを見ると、メンバー本人たちもヤンキー気質が高いと思いますね。ファンとしては、"パーフェクトイヤー"だの"エグザイルジェネレーション(09年に掲げているスローガン)"だの、今まではファンの間でしか共有されていなかったEXILEの世界観がどんどん一般的に広がっていくことが、きっとうれしくてしょうがないはずです。『自分たちが応援しているEXILEは、こんなにスゴいんだぞ!』みたいに、偉大さを誇示できるわけですから。そういうファン心理までも計算しているリーダーのHIROは、かなりやり手の"インテリヤンキー"だと思いますよ」
実際、HIROはビジネスマンとしても評価が高く、03年に設立したLDH(前身は、その1年ほど前に初期メンバー6人で出資して立ち上げた、有限会社エグザイル・エンターテインメント。当初は従業員数8名)は、「ここ2年間で社員数が2倍に増え、いまや100人以上にまで成長した」(前出・マネージャー)という。冒頭に挙げたもの以外にも、ダンス・ヴォーカルスクール「EXPG」や、「GOLD24karats Diggers」などのアパレルブランドを展開したりと、同社の業務は多岐にわたる。
物語性とギャップでファンを虜にする
メンバーを主役にしたアニメ『エグザムライ戦国』。
宝泉氏は、EXILEのショービジネスのうまさと、ファンの囲い込み方の巧みさを、こう指摘する。
「寺山修司が"職業:寺山修司"と言うみたいに、EXILEはアーティストでもアイドルでもなく、EXILEでしかないという姿勢を取ることで、ファンをうまく囲い込んでいますよね。自分たちの成功物語を描いていく中で、活動を章分けしたり、スローガンを掲げるなど、ファンにしかわからない隠語を使って"EXILE空間"を作り上げ、巧みにファンを巻き込んでいくんです。ただ、このような手法は、特に新しいものではありません。矢沢永吉やおニャン子クラブなど、自分たちの成功物語を作っていくやり方で人気を得たタレントは、各年代に存在しました。同じヤンキー系であれば、横浜銀蝿も同様ですね。EXILEが目新しいやり方で成功しているように見えるのは、ヤンキーと今風のブラックミュージックを融合させているからですよ。これは誰もやっていませんから」
確かに、下段で紹介している座談会でのファンの発言からもわかるように、次々とメンバーの間に起こる感動的な〝事件〟を目撃したファンは、いつの間にかそのEXILE空間から目が離せなくなってしまうようだ。
また、仲間を大事にしたりと、その外見からは想像しづらい「意外にいい人」な一面を知ることで、ハマる女性も多いという。そして、そうした見た目とのギャップは、「音楽性にも大きく反映されている」と宝泉氏は続ける。
「EXILEは松尾潔など、文科系・インテリ系の人間に、曲をプロデュースさせているんです。だからメンバーの外見とは裏腹に、ロマンチックでメロウな一面を強調できているんですよ。本人たちはすごくヤンキー的であっても、音楽を作っている人間が文科系なので、そこで少しインテリ臭が出るんですね。見た目と曲のギャップで、若干上質なものを聴いているような気にさせてくれるんです。そこが非常に見事。全体的にキャッチーさをとても大切にしているし、雰囲気作りもすごく上手です。本質的には、同じくヤンキーに支持されている長渕剛となんら変わりはないのですが、曲が一般受けしやすく、洗練されているので、みんな気づかないんですよね。長渕は曲も自分で作っているので、全面にヤンキー的な長渕カラーが出てしまいますが、EXILEにはそれがないですから」
さらに、今回の増員しかり、自称・大のEXILEファンだっだTAKAHIROがヴォーカルに抜擢されたり、EXPGの生徒たちが"ちびザイル"としてEXILEのライブやPVに出演しているなど、「"EXILEが進化していく中で、いつか自分もメンバーになれるのではないか"という夢を、ファンたちに与えているんです。現に今も、全国で新人発掘のオーディションを開催しています。"ダサカッコイイ"というか、ファンにとって常に手の届く身近な存在であり続けている点も、EXILEのうまさですね」と、前出のマネージャーはつけ加える。
このように、向かうところ敵なし状態のEXILEだが、宝泉氏は「人気も今年がピークではないか」と警鐘を鳴らす。
「群れたがるのはヤンキーの習性とはいえ、メンバーが10人を超えると、やはりグループとしてのカラーが曖昧になってしまい、『EXILEは自分たちのもの!』という感覚で彼らを応援してきたヤンキーたちが、ついてこられなくなってしまうと思うんです。また、『めちゃイケ』などの影響により、『Choo Choo TRAIN』のダンスでEXILEはお茶の間に認知されましたよね。ということは、新橋のオジサンが抱くEXILEのイメージ=あのダンスなわけですよ。流行語はオジサンが使い始めたら死語になるのと同じで、あのダンスをオジサンがやり始めたら、もうおしまいですね。SMAPしかり、やはり多くの世代に支持されようと八方美人になってしまうと、エンターテイナーは色気を失ってしまうんです。旬を維持したいから、活動の幅を広げたり増員したりしているのでしょうけど、今がEXILEの"最終章"になってしまう可能性はなきにしもあらずだと思いますね」
今の時代、もはやミュージシャンは音楽だけでは生き残っていけないという悲しい現実を、まじまじと見せつけてくれるEXILE。彼らの成功を見て、第二、第三のEXILEモドキが登場する日も近い!?
オヤジの素朴な疑問に答えます これでエグを知ったかぶり!
Q1 「劇団EXILE」って、どんな劇団ですか?
07年9月に旗揚げし、MATSU、USA、MAKIDAI、AKIRAが参加しています。今年2月には男性劇団員オーディションが開催され、今後は「華組」「風組」「響組」と、宝塚方式で公演を行っていくようです。
Q2 「月刊EXILE」って、どんな雑誌ですか?
08年6月に創刊した月刊誌です。創刊号の発行部数は30万部で、うち10万部が定期購読だとか! 特集テーマは、マンガや演劇、お笑いなどさまざまで、メンバーの肉体美も拝めます。価格は780円。
Q3『エグザムライ』って、どんなアニメですか?
二刀流のアツシ、一匹狼のマキダイなど、ザイル一族の戦いを描いた作品です。現在、『EXILE GENERATION』(日テレ)内で、『エグザムライ戦国』が放送中ですが、アニメファンからは黙殺されている模様!?