──いま芸能界では、非ジャニーズのイケメンタレントが雨後の筍のごとく誕生している。もはやオジサンには「誰が誰だかわかんないよ!」状態だが、このような背景には一体何があるのか?
話題となった『メイちゃんの執事』のHP。
まずは、下の「ゼロ年代イケメン史」を見ていただきたい。『花より男子』(TBS)や『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』(フジ)など、ここ数年、"イケメン"を売りにした学園ドラマがヒットを飛ばしている。小栗旬や水嶋ヒロなど、そこからブレイクした若手タレントも多く、最近でも『花ざかり~』と同じプロデューサーらが、イケメン執事が大量に登場する『メイちゃんの執事』(同)を手がけるなど、テレビ業界はイケメンブーム真っ盛りなのだ。テレビ以外でも、バンダイが「イケメンバンク」プロジェクトなるものを立ち上げ、女性向けの同名玩具から派生したケータイ小説が単行本化、さらには今春実写映画公開するなど、その勢いはとどまるところを知らない。
かつては学園モノといえば、『ただいま放課後』のたのきんトリオ・少年隊、『あぶない少年』シリーズの光GENJI・SMAPなどジャニーズ勢の活躍が目立っていたが、近年は『メイちゃんの執事』や『ROOKIES』(TBS)のようにジャニーズタレントが出ないものもある。このように、非ジャニーズのイケメンが台頭してきた経緯について、芸能評論家の宝泉薫氏は次のように語る。
「01年に公開された映画『ウォーターボーイズ』が、このイケメンブームの先駆けではないでしょうか。ジャニーズタレントはひとりも出演しておらず、この作品でジャニーズ抜きでもヒット作が作れることが証明されました。主演した妻夫木聡や玉木宏は、いまや売れっ子ですね。それから徐々に、『ごくせん』(日テレ)や『花より男子』、『花ざかり~』のように、マンガ原作でイケメンを多数出演させるなど、リアリティのない学園モノが増えてきました。その趣向にピッタリはまったのが、20代半ば~30代の女性たちです。彼女たちは、トレンディドラマや月9でイケメンを見ることにある種の萌えを感じて育った世代であり、現在も、当時の感覚の延長で、年下のかわいい男の子たちを品定めしているような印象を受けます。だから今、イケメンがブームになっているのだと思いますよ」
『ROOKIES PERFECT BOOK』(集英社)とDVD『クローズZERO』(ハピネット)。
しかし、これまでにもDA PUMPやw-inds.などほかの事務所の"ライバル"には、ジャニーズがテレビ局に圧力をかけて歌番組に出演させないなど、徹底的に邪魔してきた過去がある。ジャニーズがこの状況に甘んじているのは、一体なぜなのか?
「テレビ局はどこも不況で、制作費を抑えることに頭を悩ませています。以前は、スポンサー受けのいいジャニタレを起用すれば制作費を集められたものですが、最近はそうでもない。SMAPクラスになれば視聴率はある程度約束されますが、ギャラが高額ですし、配役に気を遣わなければならないなど、面倒な制約がある。現場には、ジャニーズを切りたいという空気が少なからずあると思います」(映画プロデューサー)
また、前出の宝泉氏は、「ジャニーズの組織が大きくなりすぎたことが、ファンの、ほかのイケメンへの心移りを招いているのではないか」ともいう。
「いまのジャニーズはタレントのイメージ演出も、育成のノウハウもしっかり確立されています。しかしその完成度が逆に、ファンを不満にさせているように思えます。つまり、ここ5〜6年で勢力が巨大になりすぎて"自分の応援でスターを育てる"という楽しみを見いだせなくなったファンがいるはずです。そういう女性たちが、雑誌やテレビ、舞台などで地道に別のイケメンを掘り起こしていった結果が、ブームに結びついたという印象を受けます。それに、最近のジャニーズはタレントを管理しきれていません。性を抑制して、恋愛を匂わさないのが、アイドルとして生き残るための秘訣なわけで、ジャニーズも長い間、そういう教育をしてきました。でも、それができているのは嵐ぐらいまで。それ以降は、恋愛スキャンダルが度々飛び出していますよね。本来ならブームに乗っかっていてもいいはずのKAT-TUNの人気急落が、それを物語っています」
ジャニーズの求心力が弱ってきているのは確かなようだが、一方でこうした声も聞こえてくる。
「ジャニーズはファンの数が圧倒的に多いので、たとえドラマの視聴率が伸び悩んでも、DVDにして売れば採算が取れるんですよ。いまのテレビはDVDを中心とした二次展開が当たり前の時代なので、やはり現状ではジャニタレは起用する側が得をすると思います。それに、昔に比べて配役上の注文もだいぶゆるくなってきたし、主演ドラマのHPの写真も一部解禁したりと、ジャニーズも少しずつ時代に迎合していますから。とはいえ、ほかの事務所に比べたら縛りは多いし、DVDのロイヤルティが高いのも事実。もしジャニタレ以外で超売れっ子イケメンタレントを生み出せたら、一番理想かもしれませんね」(テレビ局関係者)
大手プロが戦略的に送り出すイケメン軍団
ではこうした中で、いかにしてイケメンタレントは生み出されているのだろうか? まず目につくのが、小池徹平、山本裕典、溝端淳平など、アイドル誌「JUNON」(主婦と生活社)主催の「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の出身者、いわゆる"ジュノンボーイ"の元気のよさだ。同誌の石田由美編集長は、こう語る。
「弊誌は、ドラマなどで人気の男の子を取り上げるというスタンスなのですが、このブームを受けて、おのずと誌面も華やかになっていますね。おかげさまで、ここ1〜2年は部数も伸びています。2月23日発売の4月号は、『メイちゃんの執事』効果か、06年以来最高の実売部数を記録しました! また、コンテストの選考にも、レベルの高い男の子が集まるようになりました。近年は、男っぽい外見の子ではなく、かわいい・キレイ系の子が主流ですね。各グランプリ受賞者は、オファーがあった芸能事務所と面接をして所属先を決めるのですが、事務所間で争奪戦になることも少なくありません。昔に比べて、所属が決まるとすぐにいい仕事に就ける子もいますね。事務所が、いい意味で戦略的にイケメン育成に取り組んでいるという印象を受けます」
若手のイケメンを扱った雑誌や別冊ムック。
実際、各事務所はどこもイケメンの発掘・育成に力を入れている。目立つところでは、ワタナベエンターテインメントが"D-BOYS"を、ケイダッシュが異なる事務所のタレントを集めて"PureBOYS"を結成。ほかにもアミューズ(三浦春馬、佐藤健)、ホリプロ(妻夫木聡、松山ケンイチ)、バーニングプロダクション(WaT、三浦翔平)、Ever Green Entertainment(山本裕典、溝端淳平)、スターダストプロモーション(市原隼人、高岡蒼甫)、研音(松田翔太、水嶋ヒロ)なども、注目の若手を多数抱えている。中堅では、成宮寛貴や大東俊介らを抱えるトップコートも元気がいい。
そして、こうした各事務所が熱い視線を寄せているのが、特撮ヒーローモノだ。特に00年の『仮面ライダークウガ』のオダギリジョーの登場以降、『仮面ライダー』シリーズは、いまや売れっ子イケメンタレントの登竜門となっており、各事務所が売りたい期待の新人を確実に送り込むようになっている。
さらにもうひとつ、"イケメン生産場"として重要なのが"舞台"だ。その代表格が、03年から毎年行われている『ミュージカル・テニスの王子様』(以下、テニミュ)。人気少年マンガが原作となったミュージカルで、若手イケメンたちを大量投入し、そんな"2・5次元"の世界に萌えるオタク女子の熱い支持を得た。かつてほどの勢いはないが、これまでに城田優、瀬戸康史、加藤和樹などが人気を集め、現在でもテニミュのやり方を踏襲したイケメンミュージカルが年々増加している状況だ。
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「近年は、舞台(特にテニミュ)→特撮→メジャーなドラマという、イケメンのステップアップの流れも確立しつつあるので、大手芸能事務所も舞台に積極的です。もともとD-BOYSにはテニミュ出身者が多いのですが、年に1回のペースで『D-BOYS STAGE』という自社製作の公演も行っています。また、アミューズもネルケプランニングと組んで『FROGS』(岸谷五朗演出)といった舞台を主催していますね」(イケメン雑誌編集者)
こうして見ていくと、非ジャニイケメンはジャニタレとは、売り出し方が大きく違うことがわかる。その活動場所は舞台やドラマ、映画が中心となっており、ジャニーズが最も大事にしている音楽活動には消極的。つまり、ジャニーズの競合相手になりにくいわけだ。ちなみに、D-BOYSは事前にワタナベエンターテインメントがジャニーズにお伺いを立ててから用意周到に結成されたと噂されており、実際、PureBOYSは音楽活動をしているが、D-BOYSはジャニーズへの配慮なのか、音楽活動をしていない。
また、違うといえばファンとの距離感もそうだ。52ページのファン座談会で詳しく触れるが、どの若手イケメンもブログをマメに更新するなど、ファンサービスを怠らない。この点もまた、ファンの心をとらえているのだろう。
次頁からは、注目のイケメンたちの実力のほどを見ていく。KAT-TUN以降のジャニタレがパッとしないいま、ジャニーさん、のん気にお茶なんか飲んでる場合じゃないよ!?
(文/小石川光希)
ジャニーズパワー失速中?激動の「ゼロ年代イケメン史」
『仮面ライダー クウガ Vol.1』
00年1月 『仮面ライダークウガ』(テレ朝)にオダギリジョーが主演。
"平成仮面ライダーシリーズ"が、イケメン俳優の登竜門として定着する。
01年9月 映画『ウォーターボーイズ』公開。
主演の妻夫木聡、玉木宏がブレイク。のちに03〜05年、年1回のペースでドラマ版も放送。
02年4月 『ごくせん』(日テレ)放送。
05年の第2シリーズで、KAT-TUNの亀梨和也と赤西仁がブレイクを果たすが、08年の第3シリーズでは、三浦春馬と三浦翔平の光る演技で、 木雄也らジャニタレ勢もかすむ。
03年4月 若手イケメンを起用した『ミュージカル・テニスの王子様』初回公演。
口コミで人気に火がつき、いまでは韓国や台湾にも進出。
04年7月 「第1回D-BOYSオーディション」開催。
またこの年、ヨン様ブームが到来し、翌年4月には東方神起が日本デビュー。
『花より男子 Blu-ray Disc Box』
05年10月 『花より男子』(TBS)放送。
松本潤(嵐)、小栗旬、松田翔太、阿部力らが出演。小栗は松本と二分するほどの人気を獲得。この頃より、深夜枠やU局で、新人イケメンの青田買い的なドラマも作られる。
05年11月 WaTが、「僕のキモチ」でメジャーデビュー。
同日、山下智久と亀梨和也による「修二と彰」が「青春アミーゴ」をリリースし、オリコン1位を獲得。WaTは2位という結果に終わり、「WaT潰しか?」と噂される。
06年夏 早稲田のイケメンエース・斎藤佑樹投手が、"ハンカチ王子"として話題に。
以後、スポーツ界に「◯◯王子」旋風が吹き荒れる。
06年11月 若手イケメンを起用したDVD『BOYS LOVE』が話題に。
のちに映画・舞台化もされ、BL市場でもイケメンの需要が上昇。また、特撮系や舞台系のイケメンを中心に扱う「COOL-UP」(音楽専科社)など、イケメン雑誌の創刊ラッシュが続く。
07年6月 「PureBOYS」結成。
ジャニーさんのセンスにも負けないデビュー曲「乾杯ジュテーム」は、オリコン初登場31位。
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『花ざかりの君たちへDVD-BOX(前編)』
07年7月 ブームを確固たるものにした、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジ)放送。
主演の小栗旬ら総勢40人弱のイケメンが登場するも、ジャニーズからは生田斗真のみが参加。主演ではなく二番手だったため、ファンを驚かせた。
07年10月 小栗旬、高岡蒼甫、三浦春馬らが出演する映画『クローズZERO』がヒット。
今年4月には続編が公開予定。
07年11月 ケータイ小説原作で、三浦春馬、中村蒼らが出演した映画『恋空』がヒット。
以後、ケータイ小説原作の映画化には、非Jのイケメンが多く起用されるようになる。
07年12月 箱根駅伝を舞台に、イケメンランナーたちの青春を描いた『風が強く吹いている』のラジオドラマが放送。
09年に舞台版の公演が行われ、今秋には映画も公開予定。ラジオ版には、今井翼が出演していた。
『羞恥心』
08年4月 羞恥心がデビューシングル「羞恥心」リリース。
また、非Jのイケメンの暑(苦し)い演技が光る『ROOKIES』(TBS)がヒット。09年5月には、劇場版が公開予定。
08年8月 自称イケメン・狩野英孝が、元光GENJI・山本淳一プロデュースの「ようこそ!イケメン☆パラダイス」でCDデビュー。
08年12月 DA PUMPが09年春より9人組で活動することを発表。
テコ入れで、イケメンブームに乗っかるつもり?
09年1月 水嶋ヒロや佐藤健など、非Jのイケメン15人弱が出演する『メイちゃんの執事』(フジ)が話題に。
一方、亀梨主演の『神の雫』(日テレ)は、のちに視聴率5%切りで世間を騒然とさせる。