──お笑い芸人品川庄司の品川ヒロシが、映画監督に初挑戦! 自身も青春時代にどっぷりつかった"不良カルチャー"を作品に注ぎ込んだ理由を語った。
(撮影/江森康之)
「アメリカにギャング映画があるのと同じように、日本には不良映画がある。やっぱり、ヤンキーっていうのは男の子の永遠のあこがれなんですよね」
昔から、"愛すべき不良"は日本人にとって王道のエンタテインメントであり続けている。全国津々浦々に生息する少年の心に訴えかけることが、すべての娯楽作品にとってヒットへの近道となることを新たに証明したのが、品川ヒロシの自伝的小説『ドロップ』だ。
不良マンガにあこがれ、私立中学からあえて公立へと転校。「一つひとつ覚えてないくらい、毎日ケンカしてました」というヤンチャな青春時代を過ごしてきた品川。原作小説とコミックスは累計350万部のベストセラーを達成し、3月20日に全国公開される映画版では自ら脚本・監督も手がけ、長編監督デビューも果たした。まさに不良としての体験が芸人の枠を超えて現在の活動に結び付いているわけだが、品川自身は「今の人生に不良時代が役立ってるかどうかなんて、わかんないです」と笑う。
「不良だった頃は何も考えてなかったですからね。夢もなかったし。ただ自信だけがあった。いわばバカの集団ですよ。それに、俺はめちゃめちゃワルかったというより『こいつ、面白えな』って思われる立ち位置でチームにいたと思うんです。だから、不良だったからどうだということは、あまりないですね」
では、一方では映画好きのサブカル少年の一面もあった彼が不良にあこがれた理由はなんだったのだろうか?
「単純に、不良ってファッションなんですよね。勉強もスポーツもしたくないから、楽して女の子にモテたいという。映画のヒーローにあこがれても、ブルース・リーやジャッキー・チェンになるためには努力が必要じゃないですか。不良になるのに努力はいらないですからね(笑)」
映画版『ドロップ』でも、当時の不良のファッションを再現しつつ、今の視点から見てもダサいものにならないよう、服装や髪形のディテールに気を使ったという。
「やっぱり、若い子が『この服着たい』って思わないと駄目な気がするんですよ。ブレザーひとつをとっても、詰めてタイトにしたりとか、細かい部分にこだわりましたね」
"モテたい"という男子の願望が不良へのあこがれに繋がる。それを肌で知っていることが、多方面で成功を果たしている彼の、最大の強みなのかもしれない。
(柴 那典)
映画『ドロップ』
私立の中学校から"漫画みたいな不良"にあこがれて、公立中学に転校したヒロシ(成宮寛貴)。不良スタイルでキメたヒロシは早速不良たちに目をつけられ、呼び出される。そこにやって来たのは、極悪非道な不良・達也(水嶋ヒロ)だった......。累計350万部を突破した品川の小説を元に、自らメガホンを取ったリアル不良ストーリー。(C)2009「ドロップ」製作委員会
原作・脚本・監督/品川ヒロシ 出演/成宮寛貴、水嶋ヒロ、本仮屋ユイカほか 配給/角川映画 3月20日より角川シネマ新宿ほかにて全国公開。
しながわ・ひろし
1972年、東京都生まれ。95年、相方・庄司智春と共にお笑いコンビ「品川庄司」を結成。お笑い芸人としてテレビや舞台で活躍する一方で、小説『ドロップ』を上梓し、その映画の監督・脚本も手がける。