(撮影/有高唯之)
ここ数年、動員数を一気に伸ばし、演劇界を超えてエンタメ界全体で名前が挙がるようになった劇団「ポツドール」。この状況下で今年唯一の本公演を控えた今、主宰・三浦大輔は何を思っているのか? その心境を聞いた――。
「乱交パーティーには取材で何回か行きました。本当に普通の人が来ていて、エチケットもちゃんとしてるし、健全な感じだし......芝居にはそのままディテールまで落とし込んでます(笑)」
と物憂げに笑うのは、劇団「ポツドール」の主宰で劇作家の三浦大輔だ。風俗店や若者の集団生活を舞台上に再現し、人間のゲスい生態を俯瞰する唯一無二のポツドールが、10カ月ぶりに上演するのは『愛の渦』。2005年に岸田國士戯曲賞を受賞した代表作の再演で、マンションの一室で乱交パーティーに参加する男女が、静かに激しく、そしてリアルに描かれる。
「性や容姿の美醜、暴力性を芝居で扱うからか、よく『タブーに挑戦してる』とは言われますね。でも全くそんな気はなくて、人間のイヤなところ、醜い部分が露呈される瞬間を僕自身が見たくて、それを描いてるだけなんです」
『愛の渦』で覗こうとする世界は、他人のセックス。「恋愛の延長ではない、純粋な性欲」を舞台に甦らせようと、三浦が自身の全スケベ心を注入した本作は、芝居が進むにつれて、セックスだけでは人がつながらない物語へと昇華していく。
「だから設定が過激なのでグロい芝居かと思われるけど、中身は普遍的。『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)を見るような普通のヤンキーやギャルにも、ぜひ見てほしいなと」
『ロンハー』の名前が挙がったのは、三浦が「俗っぽい面白さが転がっている」との理由で、バラエティ番組に芝居のネタを求めることが多いから。多くのバラエティ番組を見る中で、今気になる芸人はエロ詩吟の雄、天津・木村だという。
「彼が番組内で、『まさかこんな下ネタでメジャーになるとは』と驚いてたんですよ。図らずも下品さが支持を受けた、うちの劇団に似てる気がして、ある種のシンパシーを感じます。やっぱり世間は、エロいことを求めてるんですかねえ......」
エロスと猥雑が人の心に潜む限り、ポツドールがさらにブレイクする可能性、あると思います。
(鈴木 工)
『愛の渦』
乱交パーティーに参加するため、裏風俗店に集まった10人の男女の一夜の出来事。名前も職業も互いに知らず、ただセックスをするためだけに集まったはずだったが、次第に各自が自分の話をし始めて......。05年、演劇界に衝撃を与えた物語が、今再びステージに!
企画・製作/ポツドール 脚本・演出/三浦大輔 出演/米村亮太朗、古澤裕介、江本純子(毛皮族)、内田慈ほか 期間/2月19日〜3月15日(全29ステージ) 場所/新宿THEATER/TOPSにて
みうら・だいすけ
1975年生まれ。劇作家、演出家。96年、「ポツドール」を結成し、2000年以降、ドキュメンタリータッチの作風に転換して注目を浴びる。近年活躍の場を広げており、本年、脚本・監督作品である映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(原作・花沢健吾)が公開予定。なお今後、大規模な劇場に進出していくため、小劇場でポツドールを見られるのは『愛の渦』が最後のチャンスになる。