──多くの読者にとって、あまり馴染みがないと思われるゲイビデオ業界。だが、有名人の出演歴が度々報じられるなど、意外と"経験済み"の人は多そうだ。ゲイにオカズを提供することに、一体どれだけのうまみがあるのか?「Gの世界」のギャラ事情をひもとく!
ヒカルくんが読者モデル転身後にリリースされた出演作。今作だけなぜかシルエット。メーカー側が配慮した?
最近では女性芸能人が"逆デビュー"を飾ることも多く、出演することに対して偏見が薄れてきた感のある「アダルトビデオ」。しかし、それが特殊なジャンル----たとえば「ゲイビデオ」になると話は別のようで、たった一度の出演が命取りになってしまった人も少なくない。
例を挙げると、北海道日本ハムファイターズのT・K投手。02年当時、彼は立教大学のエースとして注目を浴びており、ドラフト会議の上位指名も確実視されていた矢先に、ゲイビデオ出演のスキャンダルが発覚。また04年、『仮面ライダー剣』(テレビ朝日)の主役だったT・Tも、放送期間中にゲイビデオ出演の疑惑が取り沙汰されてしまった(当時の所属事務所は否定)。両者とも、ブレイクのチャンスをふいにしてしまったのは、言うまでもない。
最近では、男性ファッション誌「メンズエッグ」(大洋図書)でカリスマ的人気を誇る読者モデル、O・Hだろう。過去に彼は「ヒカル」名義で30本もの名作ゲイビデオに出演しており、ゲイである筆者も幾度となく"お世話"になった。以前、そんなゲイビデオモデルからの華麗な転身を本誌で取り上げるべく、メンズエッグ編集部に出演の過去を確認しようとしたところ、あえなく取材拒否。それどころか、編集長に「当人からは『大学の学費を稼ぐため、仕方なく出演した』と聞いています。可哀相なので、記事にするのはやめてください!」とまで言われてしまったのだが、すでに随分前からネット上では騒がれているようだ。立派なお仕事なのだから隠す必要はないと、筆者は思うのだが......。
このように出演に際して多大なリスクを負うことは明らかなのだが、今もゲイビデオに出演する男たちは後を絶たない。これは一体なぜなのか? もしかしてギャラがいいからでは!? というわけで、万年金欠にあえぐ筆者が、ゲイビデオ出演に向けて、業界のギャラ事情を探ってみることにした。
気になるギャラの相場は射精1回で4〜5万円
まず気になるのは、ゲイビデオメーカーの台所事情。現在、メーカーは20社近くあり、毎月70本近くリリースされている。ジャンルも、ジャニ系やアスリート系、デブ系、オヤジ系などさまざま。実際にゲイモデルのギャラが高額だとしたら、メーカー側も羽振りが良いといえそうだが、はたしてゲイビデオビジネスはどれだけの利益を生むものなのか? 某中堅ゲイビデオメーカーの社員に話を聞いてみた。
T・Tの疑惑を報じた記事「『仮面ライダー剣』イケメン主役の仰天ホモビデオ」(「FLASH」04年10月12日号/光文社)と、T・Kの疑惑を報じた記事「『今秋ドラフト1位』あの大学エースが『ホモビデオ』に出演」(「週刊現代」02年11月9日号/講談社)。
「弊社では若くて可愛い男の子を起用したジャニ系の作品をリリースしていまして、1作品につき平均で約500本、ヒット作になると約1000本は売れています。しかし、固定費やモデルのギャラを考えると、利益はトントン。不景気の影響もあって、今はゲイビデオ市場そのものが停滞しているので、利益を追求するだけ無駄です。そのため、利益目的というよりも、ほとんど趣味に近い感覚で制作しているメーカーが多いと思いますよ。10~20年前は売れない作品でも1000本、ヒット作だと2000本以上売れることもあったんですが、ネットの違法ダウンロードがはびこるようになってからは、そんなこともなくなりましたね」
不況の波は別の面でも押し寄せているそうで、40代の中年男が「モデルの仕事はありませんか?」と問い合わせてくることもあるとか。ところでモデルは、どうやって調達しているのか?
「弊社ではゲイの出会い掲示板を定期的に巡回して、投稿者で良さそうな人材をメールでスカウトする方法が多いです。あとは街中でスカウト活動を行ったり、応募者とも積極的に面接していますが、撮影までこぎ着けるケースは滅多にありませんね。他社だと求人雑誌の『ドカント』(パット)に広告を出したり、ウリ専(=ゲイ向けに性的なサービスを提供する店)と提携して、そこで働いているボーイを斡旋してもらっているところもあります。ウリ専側にとってはボーイの宣伝になるので、相互にメリットがあるんですよ」
ゲイビデオモデルの中には、ギャラに釣られて出演しているノンケ(異性愛者)も多いという。しかし、今は市場そのものが落ち込んでいるため、モデルのギャラもタカが知れていそうだ。
「基本的に印税契約ではないですし、モデルの質によってギャラは変わります。弊社では射精することを"1パート"と呼ぶんですが、タチ(掘る側)・ウケ(掘られる側)関係なく、1パートごとに平均5万円は支払っていますね。1作品に平均5~6パートあり、数人のモデルで分けるケースが多いです。『この子で絶対撮りたい!』と思って交渉したモデルには、1パート20万円支払ったこともあります。弊社にとっては法外な金額ですが、そういう子が出演した作品は必ずヒットするので、採算は取れるんですよ」
ギャラの算出法は各メーカーによって異なるらしく、たとえば「初めに20万円支払われ、4~5回撮影する」といったケースもあるとか。それでも単価に直すと1回=4~5万円なので、やはり相場はそのあたりといえそうだ。
いざ、モデル応募の時!はたしてその結果は......
ここまでメーカー社員の話を聞いて、すっかりやる気になった筆者。しかし、次のひと言で、その自信を木っ端みじんに打ち砕かれることになる。
「1パートの撮影につき、大体半日くらいはかかりますね。とにかく射精シーンを押さえることが大事でして、イキにくいモデルだと、射精シーンだけで3~4時間費やすこともあります」
......実は、筆者も遅漏なのである。3~4時間でも無理かもしれない!! そこで、ゲイビデオに出演経験のある人物にアドバイスを求めてみた。彼の時は撮影で2日間拘束されたという。
「1日1回で計2回掘られたんだけど、2日目なんてケツの穴にオモチャ突っ込まれたわよ。そのうえ『もっと声出せ』って文句まで言われて......。タチ役の人が『僕がお尻を1回叩いたら喘いで、3回叩いたら"気持ちイイ!"とかセリフ言ってね』って指導してくれたんだけど、なんだか屈辱的だったわ。ギャラが8万円でオイシかったし、ついでに若い時の記録も残せると思って出たんだけど、今はちょっと後悔してる。いまだに流通してるから、知られたくない人にバレちゃったこともあるし......。とはいえ何事も経験だと思うから、アンタも1回出とけば?」
経験者の後押し(?)もあり、筆者もようやく応募を決意。早速、大好きなヒカルくんと同じ大手ゲイビデオのメーカーに電話で問い合わせてみたところ、「HPにモデル応募用のアドレスが記載されておりますので、メールに名前・年齢・身長・体重・スポーツ歴・タチかウケかをお書き添えいただいた上、顔写真と、体つきがわかるように上半身裸の写真を添付してお送りください」とのこと。筆者は部活といえばマン研と演劇部にしか所属したことがなく、スポーツ歴なんてないに等しいのだが、「それでも結構です」と言うので、「SM・スカトロ不可。遅漏です」の一文を加えて送ってみた。すると、2日後、「一度面接にお越しください」との返答が。ダメだろうと思っていただけに、うれしい!
こうして夢に一歩近づいた筆者。残念ながら、本稿の締め切りまでにデビューはかなわなかったが、もし筆者の出演作を店頭で見かける機会があったら、ご購入いただければ幸いである。
(文/アボンヌ安田)
なんと腐女子にも売れている!!
ゲイビデオの魅力とは?
ゲイビデオを購入する場合、新宿二丁目などにあるビデオショップで購入するか、ネット通販を利用するケースが大半を占める。しかし、最近では池袋などにある腐女子向けの店で、ゲイビデオが陳列されていることも多い。いくら男性同士の恋愛を描いた「BL」を好んでいるとはいえ、彼女たちが興味を示すのは二次元作品に限られると思っていたのだが......。中堅ゲイビデオメーカーの社員によると、「購買層の約1割は女性」とのことなので、どうやら三次元作品を好む腐女子もいるようだ。
鼻血ブー(?)なゲイDVDが付録についた、「BOY'Sピアス」。
また、BLコミック誌「BOY'Sピアス」や「恋June」(共にジュネット)ではゲイビデオの特集が組まれたり、リアルな男同士のエロシーンが収録されたDVDが付録になるなど、確実に腐女子からの需要は増えつつある。その一方で、BLマンガ風なゲイビデオも増えている様子。実際に鑑賞しているという腐女子に、ゲイビデオの魅力について聞いてみた。
「私にとってゲイビデオは"三次のおやつ"(笑)。基本的には二次元が好きだけど、たまにつまみたくなるんです。激しいエッチシーンも嫌いじゃないけど、どちらかというとラブラブなエッチシーンのほうが、個人的には興奮しますね」
今やゲイビデオは、ゲイだけのものではなくなってきているのかもしれない。