──三菱UFJ、みずほ、三井住友。合併を繰り返し、総資産100兆円を超える規模となった3大メガバンク。世界的不況発生以降、貸し渋り、貸しはがしで多くの中小企業を倒産へと追い込んでおきながら、彼らは派閥抗争に明け暮れているようで──。
「100年に一度」といわれる金融危機が悪化の一途をたどっている。サブプライムローンに投資をした欧米の金融機関で巨額の損失が相次ぎ、国際通貨基金(IMF)の推計によれば、世界の金融機関の損失は昨年10月時点で1兆4050億ドル(約143兆円)にも達するという。欧米の金融事情に詳しいエコノミストは「この10年間、欧米の金融機関は、金融工学を駆使した金融商品の取引によって空前の利益を上げてきた。ただ、今回の金融危機でそうした金融商品が"インチキ"だったことが明らかになり、欧米の金融機関はそのインチキで稼いだ利益のツケを支払っている状態だ」と喝破する。
インチキのツケは日本の金融機関にも深刻な影響を与えている。メガバンクではサブプライムローンなど証券化商品による損失をはじめ、昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした株価の下落による保有株式の損失拡大などが業績を直撃。2006年3月期決算では三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が過去最高の連結最終利益を上げていたが、それから3年もたたない08年4〜12月期決算では最終赤字に転落するなど、ドン底に沈み込んでいる。少し前までメガバンクトップは「金融危機は欧米の問題で、日本の金融機関にとっては対岸の火事だ」と強調していたが、1年もたたないうちに「全部がマイナス。良いところは1つもない」(みずほFGの前田晃伸社長)とかぶとを脱いでいる状態なのだ。この変質について前出のエコノミストは「日本の金融機関も、欧米の金融機関のインチキに乗っかって稼いでいただけ。先を見据えた経営などはなかった」と指摘する。
「欧米金融機関が好況を示す中、メガバンクは似たような業務でそのおこぼれにあずかっていた。メガバンク最大の損失を出したみずほFGなどはその代表格で、欧米金融機関が倒れたらドミノ倒しのように影響を受けた」(同)
さらに、金融危機はメガバンクの闇を浮かび上がらせている。その最たる例が、中小企業への貸し渋りや貸しはがしだ。ここ数年メガバンクは、収益を拡大させるため地方の中小企業向け融資を拡大させてきた。ところが、業績が悪化すると姿勢を一転、一気に地方からの融資を引き揚げるなど、回収に走っている。ある地銀幹部は「メガバンクはおいしい汁を吸うだけ吸って、景気が悪化するとすぐに地方から引き揚げていった。融資の回収を一気に行ったために、事業はうまくいっていたのに、資金繰りがつかずに倒産を余儀なくされた中小企業も多い」と嘆く。
自らの無策によるツケを消費者に回して、メガバンクは自らの厚遇を維持したまま金融危機による損失の責任回避や相変わらずの社内抗争に血道を上げている。「国破れてメガバンクあり」とでもいうべき3大メガバンクの"本当の"経営実態について、次記事で詳しく紹介しよう。
(文/隅田哲太)