金融危機の救世主か!?"トービン税"の実現度

トービン税
イエール大学経済学部教授ジェームス・トービンが提唱した、国際間通貨取引に税を課す制度。その税収を途上国のエイズ問題や環境問題に使用されるということが、議論されている。

 1月20日、ついにアメリカ合衆国でオバマ政権が誕生する──。

 サブプライムローンやヘッジファンドの破綻など、アメリカの金融市場主義に批判が強まる中、これら金融危機を「(1929年の)大恐慌以来、最も深刻な金融危機」と危惧したバラク・オバマ大統領だが、従来の金融経済路線を踏襲するか、その動向が気になるところだ。

 そんな中、通貨危機を防ぐ政策として「トービン税」(通貨取引税)が欧米日などの民間のシンクタンク、専門家らの間で注目されている。


 トービン税とは、アメリカの経済学者で1981年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・トービン氏が為替市場の安定化を目指し、72年に提唱した税制。その効果は「年間約450兆ドルともいわれる国際間の為替取引に課税して短期の投機を抑制し、その税収を途上国の支援、開発や環境保護に使うというのが狙い」(経済ジャーナリスト)という。

 投機マネーに歯止めをかけるだけでなく、途上国支援にまでつながるとは理想的な税制にも見えるが「例えば円とユーロの間だけで課税し合っても、税を敬遠した投資家がドル買いに走ったらドル高を引き起こしてしまい、『ドル高騰』を招きます。つまり、世界各国が同時に導入しないと意味がない」(同)ため、提唱以来経済界では"夢の税金"とか"理想主義者の寝言"などと言われていた。

 ところが90年代のタイ、メキシコ、韓国などの通貨危機を経て90年代末期からトービン税をめぐる状況が変わってきたようだ。

「各国の政府で、トービン税が議論されるようになったんです。フランス、ベルギー、イギリス、カナダなどの議会でトービン税の導入や検討を求める決議が採択されたほか、日本でも昨年2月28日に自民党・津島雄二税制調査会長が中心となって『国際連帯税創設を求める議員連盟』が設立されています」(同)

 このようにトービン税の評価や導入への期待は高まっているようだが、はたして"夢の税金"は実現できるだろうか? 経済評論家・森永卓郎氏は「理論としては正しい」と指摘するものの「現実的には不可能でしょう」とバッサリ。
「国際間をまたぐ機関や共通のホストを創設して運営されなければいけませんが、世界中のすべての国が加盟するとは考えにくい。一部政治家が議論しているとのことですが、これは『通貨危機に取り組んでいる』というポーズなのかもしれませんね(笑)」(森永氏)

 投機目的の為替取引にはなんらかの抑制策が必要かもしれないが、やはりトービン税については"夢"か"寝言"ということか!?
(三品 純)

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