Perfume&宮崎あおいに見る〈ブレイク=ファン排除〉の"悲しみ"

↑画像をクリックすると拡大します。(写真/菅野ぱんだ)

 タレント雑誌には、毎号のように、次に"ブレイク"するアイドルを追い求める企画が並んでいる。しかしその種の企画で見るのは、ここ1~2年いつも似たような顔ぶればかり。アイドル業界は、今般の経済危機より一足早く、停滞時期に突入してしまったのだろうか......?

 いや違う。アイドルたちが好きで好きでしょーがないヲタ目線で眺めてみれば、いるのだいるのだ、ブレイク必至のナイスな女の子たちが!!

 そこで本企画では、知名度はまだまだでも、これぞと見込んだアイドルたちを、独断と偏見で紹介していきたい。その前にまず、アイドルファンにとって「ブレイク」なる言葉が意味するところを考察してみよう。

 そもそもアイドルオタクは、マニアになればなるほど、先物買いに走りがちとなる。中には、有名芸能スクールの小規模な発表会やイベントにまで出向いて、めぼしい新人を見つける者さえいる。その際、アイドルを好きになるポイントは何か? 端的に言えばそれは、「オーラ」だ。「なんだか気になる」「ビビッときた」──。それらは完全なる思い込みの産物だが、その思い込みが増大していくことで、人気という不確定な何かが生じる。そしてそこに、ドラマの役柄や楽曲、つまり、それまで無色透明な存在であった少女を演出するための要素が蓄積されていき、「型」が生じる。これが、認知期としての、「第1のブレイク」である。

08年は、『篤姫』によって大いなる飛躍の年となった宮﨑あおい。右は、Perfume『ポリリズム』(徳間ジャパン)

 長い下積み期間を経て08年を代表するアイドルにまで成長したPerfumeでいえば、03年頃、「スウィートドーナツ」で「80年代風テクノポップなアイドル」という型を成立させた時期に当たる。

 その後、「リニアモーターガール」(05年)からの「近未来三部作」で、クールなテクノポップアイコンとしてのイメージを先鋭化させた彼女たちは、続くシングル「ポリリズム」(07年)で大ブレイクを果たすのだが、この「先鋭化」こそが、第2ブレイクの重要なポイントである。メジャーデビュー以降のPerfumeは、アイドルではもはやなく、完全にアーティストとなった。物事が先鋭化するとき、そこには必ず排除の論理が働く。つまりここで、多くのアイドルファンが離れていく。実際、アイドルとしてPerfumeを捉えていたファンの中には、「Perfumeは『ビタミンドロップ』(04年)まで」と公言するものも少なくない。

 昨年『篤姫』で国民的女優に成長した宮﨑あおいにも同じことがいえよう。

 当初真っ先に彼女に注目したのは、ロリコン的感性を持つアイドルオタクたちだった。「ピチレモン」(学研)のレギュラーモデルとして注目を集めた彼女における、アイドルオタク的な意味での絶頂期は、『害虫』『EUREKA』『パコダテ人』という映画3本のスペシャルコンボでロリコンどもをノックアウトした02年~03年の時期であり、これが彼女における認知期、つまり第1ブレイクである。

 その後、さらに知名度を上げつつ、映画『NANA』(05年)で髪を茶色く染め、ビッチ要素の強いヒロイン・ハチ役を担当、さらに俳優・高岡蒼甫との結婚(07年)も果たし、わずかに残っていたアイドルイメージをすべて断ち切ることで彼女は第2ブレイクに成功し、一流女優の仲間入りを果たしていく。

 ここからいえること、それは、アイドルにとってブレイクとは、すなわちアイドルがアイドルではなくなっていく過程であるという、逆説的な事実だ。アイドルを愛すること、そして愛したアイドルたちがブレイクしていくこととは、この悲しみに耐えていくという作業にほかならないのである。

 さて、そんな悲しみに耐えつつ、09年のアイドル業界を眺めてみよう。

 まずはバラエティ枠だが、次ページの対談にも登場してもらった上原美優や手島優、さらに深夜番組『お願い! マスカット』(テレビ東京)で"浪速の一匹狼"の愛称を付けられたKONANなどが注目株。現在深夜番組を中心に注目を集めているバラドルたちに要注目である。

桐山瑠衣『バニラ色の瑠衣』(左)と、篠崎愛『おっきな愛』

 若手女優を見る上では、『篤姫』(NHK)の余波で、「ポスト宮﨑あおい」がテーマとなるだろう。『ケータイ刑事銭形シリーズ』で初代・銭形愛を宮﨑が務めたことからも、"多聞チルドレン"(詳細はアイドル特集【3】)が持つブランド力がさらに絶大なものになっていくものと思われる。

 出版不況によるここ数年の右肩下がりな状況を引きずったグラビアアイドル業界では、近年、U15やお尻系、黒船ブームと、嗜好が細分化されすぎてカオスな状態にあった。しかしここにきて、篠崎愛や西田麻衣、桐山瑠衣など、グラビアの王道である童顔巨乳系に回帰しつつある。彼女たちの特徴は、制作費の安いDVDでまず実績を積み重ねて人気を得たこと。出版社の堅実経営路線が、結果としてグラビア界を実力主義に導いたのである。

 というわけで09年注目アイドルの傾向を大きくまとめてみた。アイドル特集【2】の記事では、アイドルの側から見た「ブレイクの魅力」について、アイドル本人たちに話を聞いてみたい。

(構成・文/エリンギ・岡島紳士・清田隆之(BLOCKBUSTER))

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