今年も、数だけはたくさん出たハロプロ写真集。デビュー当時小学生だったあの子やこの子も、みんな大きく立派になりました!!
──里田まいのブレイク、加護亜依の復活、年長メンバーの卒業など、今年もいろいろあったハロー! プロジェクト。その凋落の軌跡を、サイゾーが誇るアイドルライター・エリンギが、彼女たちの写真集を通して読み解く!
2008年の写真集について、不況でも股間をアツくした写真集【2】までで振り返ってきたわけだが、この記事では、ハロヲタである筆者が、紅白落選に肩を落としつつモーニング娘。(以下、モー娘。)率いるハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)メンバーの写真集もおさらいしたい。なぜ今、あえてハロプロ写真集を取り上げるのかと問われれば、筆者が好きだから、としかいいようがない。まあ、あえて言葉にするとすれば、今年も相も変わらずなんだかんだと叩かれまくったハロプロのここ数年の長きに渡る低迷ぶりを、写真集を通してよりリアルに感じられないだろうか、とそう考えたのである。
今年、ハロプロ写真集についての話題で、ファンを最も騒然とさせたのは、『LOVE LETTER』(10月/ワニブックス)における、道重さゆみ(モー娘。)の水着面積の小ささだろう(とはいっても、一般のグラドルレベルには到底及ばないのだが)。所属事務所であるアップフロントエージェンシー(以下、UFA)から推されていないメンバーほど肌の露出が高くなる、という傾向もあるのかもしれないが、単純に肉体的にいやらしいかどうかで水着が選ばれているような気がしなくもない。思い起こせば、乳がでかいからというただそれだけの理由で、美勇伝から岡田唯をグラビアソロデビューさせたことからも、エロ領域において同社は、意外と柔軟な選択をすることができる事務所だといえるのかもしれない。
一方、道重と同じ第6期メンバーである田中れいな(モー娘。)の写真集『Very Reina』(11月/ワニブックス)は、コスプレがメイン。これも、道重とは逆の意味、つまり身体が肉々しくないという理由からの選択であるかのようにも思われるが、いかんせん、コスプレの内容があまり振り切れていない。4年前に発売されたファースト写真集『田中れいな』(04年11月/ワニブックス)では、特攻服を着用するなどして半ば公式的に彼女のヤンキーキャラを押し出すという事務所サイドの明確なビジョンが見てとれたが、今作では、ロック風であったりゴス風であったり、はたまたポップであったりシックであったりと、まったくまとまりがない。ハッキリしているのは、ほかのメンバーに比べてそもそも水着を着ているカットが少なく、また生地面積が大きいといったことくらいだ。
モー娘。以外に目を向けてみれば、矢島舞美(°C-ute)が、その腹筋の美しさで彼女らしい爽やかなアスリート感を醸し出した『爽・空』(2月/ワニブックス)や、石川梨華が美勇伝の活動終了にあたって出した『風華』(3月/キッズネット)の、何か憑き物が落ちたかのようなすがすがしい笑顔など、見どころは十分にある。しかし、彼女たちの成長を楽しめるといえば聞こえはよいが、それも結局のところ表情(「こんな顔もできるようになったのね」といったたぐいの)や肉体的な変化(それも、太った or痩せたという程度)を確認できるというくらいのもので、そんなものはしょせん、誤差の範囲内でしかない。
失われてしまったハロプロの実験性
ハッキリいってしまえば、ハロプロ写真集は、グラビア写真集としてはまったく面白くない。一般のアイドル写真集ユーザーに対する訴求力はほとんどなく、かといって、本人たちのイメージをより広げるような新たな提示が事務所サイドからなされるわけでもない。それに見合うように、ファンも惰性でしか買っていない。しかしこの08年に、マンネリズムに支配されたハロプロ写真集を買い続けるほどの余力を残したヲタが、いったいどれほど残っているというのだろうか?
06年には、モー娘。が『ふつうカワイイ免許皆伝』(新潮社)という謎の7メートルの巻物写真集を発売するなど、なんらかの実験的な試みも見られた。少なくとも、何か面白いことをしてやろうという気概は感じられたのだ。翻っていま、ハロプロ写真集はもはや、惰性の産物をただ吐き出しているだけのようにしか私には思われないのである。
現にハロプロのビジネスにおいて、写真集はジワジワと事務所の興味を失いつつあることがわかる。角川書店とUFAの合弁会社であるキッズネットからの発売が途絶えがちになり、ワニブックスからの発売に集中していったことからも、それは明らかだ。ヲタの本分として、コレクターズアイテムたりうるのは写真集ではなく生写真であり、ビジネス的にもそちらのほうが儲けが大きいという事情もあろう。事実、シャ乱Q20周年コンサートでは、なぜかハロプロ勢の生写真付き写真集の即売会が行われた。
ハロプロ写真集を考えれば考えるほど、五里霧中の迷宮に入り込んでしまったようで、強烈な吐き気を覚える。この不快なやるせなさを、いったいどうすべきだろうか? なんともしがたい閉塞感。マンネリズム、繰り返されるその反復の中で、アイドル写真集がアイドル写真集としての意味を失ったときに、また新たな魅力が立ち上がることもあるのだろうか? 解決策を必死で考えてみたが、だってもうわかんないんだもん(涙)。というところで、寺山修司で匙を投げて、終わりとしたい。
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし
身捨つるほどの祖国はありや
寺山修司(『空には本』より)
エリンギ
1980年、東京都生まれのフリーライター、映像制作者。主にアイドルとオカルティズムとに向けられた独断と偏見に満ちた物言いは、ときに反感を買うこともあるが、当人は、対象への誠実さの表れであると自負している。