溝畑宏&スザンヌ 芸スポをにぎわせた、感動秘話が詰まった一冊

(写真/江森康之)

草サッカーから日本一へその逸話をドバイに重ねる

[選者]
溝畑宏(株式会社大分フットボールクラブ代表取締役社長)

今やドバイは世界中のお金持ちが集まる究極のリゾート島。デイビッド・ベッカムやビル・ゲイツも別荘を構えるこの都市の成長過程、そして発展の理由を詳細に記したのが、『ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか』です。フットボールクラブ(大分トリニータ)の社長である私がこの本を紹介することを、皆さんは不思議がるかもしれません。しかし、ドバイは5〜6年前から世界中の投資家や経営者の間で話題になっていて、もちろん私の耳にも「急成長している都市がある」との情報が届いていました。20年前まではただの砂漠でインフラすら整備されていなかったのに、数年前から巨額の資本が集まるようになり、各国の一流企業を誘致することに成功。また超高級ホテルも次々建設され、セレブが集まる世界最大のリゾート地へと変貌を遂げてしまった。私はこの「ゼロから作り上げられた」という部分に、クラブ経営と共通する"夢"を感じました。だからこそ、この本から感銘を受けることもできたのです。


 クラブ作りは、よくよく考えるとひとつの街作りに似ています。スポンサー(=資本)を集め、優秀な選手(=企業)を呼び寄せる。そして、サポーターに満足してもらえるクラブとしての結果やサービス(=リゾート)も作り上げなくてはなりません。今年、私たちはようやくナビスコ杯優勝というタイトルを獲ることができましたが、クラブ創設当時の大分にはサッカー文化が根付いていなかったため、何もないところからのスタートでした。ただ「何もない」ということは、裏を返せば「なんでもできる」ということ。真っ白なキャンバスに自分なりの絵を描くことは、自分の夢を自由にかなえるチャンスでもありました。

 話を元に戻しましょう。この本の著者である福田一郎氏は、ドバイが急成長した理由はまったくの偶然でなく、緻密なアクションプランがあってこそだと強調しています。ただ漠然と都市作りをしていたのではなく、都市が繁栄するまでの道筋を、実に順序よく具現化させていったというのです。長い下積みを経て、1カ月、1年、10年単位で徐々に計画を実行し、今の姿を勝ち得たドバイ。夢がないと成長できないし、夢以上のものになれないことは、都市も人間も同じです。ただ、そこには明確な理念とビジョン、そして忍耐力が必要だということを、この本は語っているのだと思います。

「夢は大きく、されど道は地道に」──これは私の座右の銘ですが、大分トリニータもまた、Jリーグ制覇にアジア制覇、そして世界進出と順に目標を追っています。ぜひ皆さんも、自分なりのフィールドで将来の夢を持ち、その夢が夢で終わらないアクションプランを立ててみてください。この本がその計画や実行のヒントになることを祈っています。

みぞはた・ひろし
東京大学卒業後、自治省(現総務省)に入省。出向先の大分で地域活性化のためのW杯開催誘致、大学の開学などに携わり、94年のクラブ発足時から運営を担う。当時は野球場で練習し、観客がわずか3人だったことも。04年、現職に就任。今年、クラブはついに大躍進を遂げ、ナビスコ杯で初のタイトルを獲得。テレビでは溝畑社長の感涙にむせぶ姿が放送され、無類の情熱家として話題を呼んだ。

  
『ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか』
福田一郎/青春出版社(08年)/788円
建設ラッシュに沸く高層ビル群、石油が出ないのにGDP2倍の急成長……。今、世界で最もお金が集まる砂漠の人工都市・ドバイの全貌を、ドバイ専門コンサルタントが詳細に解説!

一生分の涙が溢れ出る"奇跡"の愛のメッセージ

[選者]
スザンヌ(タレント)

 ちょっと前に、TBSで『余命1ヶ月の花嫁』というドキュメンタリーが放送されていました。今回皆さんにオススメするのは、その番組が本になったもの。ちなみに私がこの本を知ったのは、お友達に「いい本があるよ~」って教えられて「じゃあ、私も読もうかな~」っていう、ほんのささいなやりとりがきっかけでした。

 この本は、「余命1カ月のがん」と宣告された23歳の千恵さんが、それでも当時婚約者だった太郎さんと結婚して、家族のみんなと一緒に残りの1カ月を幸せに過ごす物語。私は飛行機の中で初めてこれを読んだのですが……あまりのショッキングな内容に、隣の人がひいちゃうくらい、次々と涙が溢れてきて泣いちゃいました。悲しくて、やり切れなくて、でもどこか温かい気持ちにもなれて……いろんな感情が渦巻いて、心がキューッと締め付けられたのを覚えてます。

 一番印象に残っているシーンは、ある日の病室で交わされた千恵さんと太郎さんの会話。ごくごく普通に太郎さんがビデオを撮りながら、千恵さんに「今の気持ちは?」と聞いたんです。すると千恵さんが、「生きてます。ちゃんと生きてるよ」って。これはゼッタイ千恵さんにしか言えない言葉! 死が間近に迫っているというのに、笑顔でこんなことを言える彼女ってすごいです。でも、そのときの太郎さんの気持ちを考えると、どうしようもなくなって……やっぱりボロボロ涙が止まりませんでした。

 できればこの本は、毎日がつまらなかったり、今の自分にモヤモヤとした不満があったりする人に読んでもらいたいです。というのも、読めばゼッタイ「毎日を大切に生きよう!」と思えるはずだから。私たちが退屈でつまらないと感じている「今日」は、千恵さんがどうしても生きたかった「明日」なんですよ。今自分が生きている"キセキ"をちゃんと実感して、人生はとてもはかないってことに、私たちはもっと正面から向き合う必要があると思うんです。もちろん、私自身もこの本を読んでいろんなことを考えました。もし、自分がとてもつらい状況になってしまったら何ができるんだろう? 千恵さんのように、強い心のままでいられるんだろうか? 本当に、この本は自分自身を見つめ直すきっかけになる、ステキな本だと思います。

 最後に、亡くなられた千恵さんにメッセージを送ります。

「千恵さん、どんなときでも大切な人を想い、感謝して、笑顔でいられる強さを教えてくれてありがとう! 千恵さん自身がとても強い人だったからこそ、ああして大好きな家族と幸せな最後の1カ月を過ごせたのだと私は思います。どうか天国でも、千恵さんがステキな笑顔のままでありますように。この本に出会えたことを本当に感謝しています!!」

すざんぬ
86年10月28日生まれ。06年の春に福岡から上京。07年に『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジ系列)に初出演すると、その"おバカ"なキャラクターが大好評となり、現在の「おバカタレント」ブームの火付け役となった。『体操の時間』(フジ系列)では、毎週月曜日に素敵な(?)オリジナル体操を公開中! また、公式携帯サイト『スザンヌざんス』もオープン! ブログでの最新情報をお見逃しなく!

  
『余命1ヶ月の花嫁』
TBS「イブニング・ファイブ」編/マガジンハウス(07年)/1520円
乳がんと闘い、24歳で亡くなった長島千恵さんからの、「愛といのち」のメッセージ。最愛の夫・赤須太郎さんと共に、最後まで人を愛し、愛されて生きた、感動の物語。

(構成/西原太郎・平田誠人(KyoPro))

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