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“ドラッグ”は人類の旧き友――鎮痛効果、嗜好品、そして戦争へ。医薬の鬼子“ドラッグ”1万年史(前編)

2020年12月 5日 11:00

――有史以前からその存在が確認され、使用されていたという「ドラッグ」。ときに鎮痛効果をもたらし、ときに嗜好品として愛でられ、そして戦争をも巻き起こした“人類の旧き友”に、なぜ我々は翻弄されるのだろうか。そんなドラッグと人類の1万年史に、気鋭のサイエンスライターが迫る――。

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『世界史を変えた薬』(講談社)

 日本で「ドラッグ」といえば、多くの場合、精神に対して作用を及ぼす、乱用薬物を指す言葉として用いられる。だが英語でいう「drug」は、いわゆる麻薬や幻覚剤から、医療の現場で用いられる正規の医薬までを広くカバーする単語だ。実際、乱用薬物と医薬品との間には、はっきりした境界線が引けるものではない。モルヒネや大麻が医療目的に使われることもあるし、医薬として開発された化合物が違法に取り引きされて乱用されるケースもある。人間の精神に強く作用する物質は、使い方次第で疾患の治療もできるし、肉体と心を蝕むドラッグともなり得るのだ。「毒と薬は紙一重」とよく言われるが、実際には両者は紙一重の差ではなく、重なり合って存在している。

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