ジャニー喜多川氏
大手芸能プロはすでに後継者が後を引き継ぐ段階に入っている。老舗の「渡辺プロ」は創設者・渡辺晋氏亡き後、妻が引き継ぎ、2000年からは2人の娘が「ワタナベエンターテインメント」に社名を変更。姉妹それぞれ別の会社の代表に就きグループを形成。新たなスタートを切りさらに成長を続けている。芸能関係者の話。
「一説には姉妹の仲が悪いと言われていますが、姉妹のライバル心は強く、競い合うことで会社の業績を伸ばしている。最近は俳優だけでなく、お笑いにも力を注ぎ、多くのタレントの活躍が目立つ。今や昼番組の顔になった恵俊彰を筆頭に予備校講師の林修まで司会者に送り込み大成功。さらに『世界の果てまでイッテQ』(日テレ系)で人気のイモトアヤコも所属。バラエティー番組はナベプロなくして成立しないほどで、多くの芸人を抱える吉本興業も油断できない」
他の大手プロも息子など身内が後継ぎとなり順調だが、「サンミュージック」(かつては松田聖子らが所属していた大手プロ)は息子が継いだ途端、酒井法子の覚醒剤事件。さらにベッキーの不倫騒動とトラブルが重なった。
「創設者の父親が存命だったら、もっとうまく対処していたのでは。やはりスキャンダル対応に慣れていない息子は後手、後手の対応でメディアの間からも心配の声があがっていた。一時は事務所経営の危機まで伝えられたこともあった」
後継ぎは親の残したタレントという財産でしばらくは安泰でも、芸能界はスキャンダル、独立と、いつなにが起こるかわからない世界。一寸先は闇である。元芸能プロ幹部はこんなアドバイスを送る。
「大半の事務所社長は身内を後継ぎにしても、“会長”なりの肩書きで院政を敷いて後ろで目を光らせている。その間はいいでしょうが、会長がいなくなった時がポイント。後継者の力だけでタレントの育成と売り方をきちんとできるかにかかっている。特に父親にお世話になった歌手が、完全に息子に代わってもついていくかどうかがむずかしく、たいてい問題点が出てくる。ビートたけしの独立で多くのタレントが辞めていったオフィス北野の様な例もある。芸能プロの社長の腕が本当に試されるのは、内外で起きる危機に対する管理にある」
さて、大半の大手芸能プロが二代目にバトンタッチされているなか、後継者問題に揺れているのが「ジャニーズ事務所」だ。
創業からすでに56年。今も経営者としてトップの座に君臨するのが創設者のジャニー喜多川社長(86)と姉のメリー喜多川副社長(91)の2人。音楽関係者の話。
「大手プロのほとんどは俳優から歌手、タレントと総合芸能プロなのに対し、ジャニーズは男性アイドルに特化することで成功した。他の事務所の追随を許さないタレントの育成と売り方のノウハウが完成している。特にジャニー氏の男の子をスカウトする眼力とプロデュース能力は凄い。誰も真似できない」
しかし、どんな丈夫な鉄骨も年数とともに金属疲労が出てくるように、ジャニーズ事務所もほころびが出始めている。極め付けが事務所のトップアイドルグループとして長きに渡って事務所を支えてきたSMAPの解散・独立問題だった。メリー喜多川副社長とSMAPの実質の育ての親だった元マネージャーの飯島三智氏が対立。香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎の3人が事務所を退所。飯島女史とともに新たな事務所を設立した。昨年秋からはネットを中心に活動を再開するも、ジャニーズ事務所との冷戦は今も続いている。SMAPがいなくなってもジャニーズ事務所は何事もなかったかのように活動は順調。嵐を筆頭に、新たなグループもデビューし、勢いは増すばかりだが、問題はタレントを支える事務所の内部。すでにメリー氏の娘で後継者として実質、事務所を仕切る藤島ジュリー景子副社長(52)が後継者になるのは決定事項。芸能界の中からも、
「ジャニー氏、メリー氏とも高齢。来年には完全にジュリーが社長としてトップになると言われています。しかし、母親のメリー氏から帝王学を学んできたとはいえ、やはり女性。大手プロには名参謀がいるように、片腕となる参謀が必要。それが誰になるのか注目されています」と関心度は高い。
最年長の近藤真彦、東山紀之らの名前も上がっていたが、ここにきてタッキーこと、滝沢秀明の名前が急浮上している。
以下、次回に。
(敬称略)
二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。