――ゲーム音楽が好きという人はいるかもしれないが、最近ではファミコンやゲームボーイから、新たに別の音楽を作るジャンルがあるという。そんな音楽ジャンルの中心にいるのが、こちらの派手な髪色の女の子。
(写真/宮下祐介)
撮影場所の渋谷のゲームセンターがよく似合う、ピンク色の髪をした童顔の女性。彼女が「チップチューン」というジャンルで、世界の音楽マニアから注目を集めるTORIENAだ。
チップチューンとは、ゲームボーイ(以下GB)やファミコンに内蔵されている、チップ音源によって作られる音楽のこと。TORIENAは作詞・作曲、歌唱、アートワークや全体的なプロデュースをひとりで手がけている。
そのライブは非常にユニークだ。LSDjという作曲ソフトで作った音楽をGBのカートリッジに入れておき、それをGB本体で流しながらDJスタイルでつないでいく。1台のGBには5曲程度入り、2台を使用することで30分のライブが成り立つ算段だ。相棒のGBと共に歌い踊る彼女の姿は、ピコピコとしたレトロな音色とは真逆の荒々しさを持っている。
「GBは、同時に出せる音がたった4つだけ。そうやって制限された中でいかに新しいこと、スゴいことをするかってとこにロマンがある。だって、レトロな機械からEDMが流れるとか、めっちゃ面白いじゃないですか!」
そう語る彼女の活動は海外でも高く評価され、『Square Sounds Melbourne 2015』など、多くのイベントに出演してきた。
「チップチューンは、まだまだ規模の小さいジャンルですが、ミュージシャン同士の結束力が強くて、国の垣根を越えた交流も多い。その中でも私は、曲もそこそこ評価されていたし、何より20代前半でこの音楽をやっていることが、ちょっと珍しかったのかな?」
そんなTORIENAの土台を作ったのは、高校生まで過ごした故郷・北海道での暮らしだ。
「本をたくさん読んだり、みんなが触れないであろう音楽に親しむようになったのが小学校5年生くらい。シューゲイザーやニューウェイブを知ったのもその頃。あと、親と一緒にヴィレッジヴァンガードに行ってたんですけど、実際は自由行動で、『30分後、ここに集合ね』っていう感じで好きに過ごしていました」
彼女が多様な創作物に親しむようになったのは、その人見知りで不器用な性格が大きく影響しているという。