――車でドライブしながら、カーステのラジオから流れる最新ヒット曲に耳を傾ける――といった時代も、もはや昔。エアプレイされるだけがラジオ局における音楽の正しい姿ではない。近年、大きな変化が起きているラジオと音楽の関係性を、識者のコメントを交えながら分析していく。
「音楽番組といえばFM!」という概念もあったが、近年は企画色が強く、詳細に説明してくれるありがたみも相まってか、AMの存在意義が業界内でも再評価されている。
ラジオにとって、切っても切れない存在である“音楽”。ほぼすべてのラジオ番組で使用され、開始を知らせるジングルとして機能したり、あるいはBGMとして使われたり、トーク後に単独でプレイされる瞬間には、主役の座に躍り出る。中でも音楽そのものをメインに扱う番組は、ラジオ局のコンテンツとして重要な存在だ。本稿では、そんなラジオと音楽の親和性の高さと、両者の関係について考察していく。まずは、約4半世紀にわたってラジオ業界に携わり、2010年からNHK-FMの人気番組『松尾潔のメロウな夜』を担当している音楽プロデューサーの松尾潔氏に、他メディアと比較したラジオの優位性について話を聞いた。
「ラジオはテレビと比べた場合、録音物をアーティストや制作者の意図に近い形で届けやすい。ビジュアルより歌やサウンドに重きを置くアーティストにとって、ラジオの存在は心強い援軍となっているでしょうね。あと、時間に制約の多いテレビとは違って、(1曲を)省くことなく完奏させることも容易ですからね」
レコード会社にとってラジオはプロモーションの場として大きな役割を果たす時代が長らく続いていた。しかし、その状況は大きく変わりつつあるという。原因はもちろん、若者のラジオ離れだ。大手レコード会社にてディレクターを務めるM氏の証言。
「一昔前のラジオ・プロモーションというのは、宣伝部の登竜門的存在で、いかにラジオ各局のヘビープレイを獲得するか? に奔走していました。しかし現在は、あまり力を入れなくなってしまいました。やはり、昔ほどのラジオの影響力がなくなったというのが大きな要因です」
松尾氏が続ける。
「ラジオを持たない人が増えました。特にマイカー所有に執着しない若者が増えたこともあってか、車の中でラジオを聴く習慣も減りつつあるように感じます」