華北交通写真分類カード(京都大学人文科学研究所蔵)
京都大学に残されていた華北交通株式会社(以下、華北交通)のストックフォトが発見され、研究や公開が進んでいる。ストックフォトとは、グラフ誌や広告などの媒体で繰り返し使用する前提で体系的に撮りためられ、管理された写真群のことである。日本における嚆矢としては、1934年に外務省の外郭団体として創設された国際文化振興会が満州事変と国際連盟脱退後の国際世論の悪化を受けて日本のイメージアップを図るために構築したKBSフォトライブラリーがある。近年では、インターネットなどの普及を背景にゲッティ・イメージズやアフロなどといった会社がストックフォトを事業化し、イメージの使用権の販売を行っていることで広く知られる。
南満洲鉄道北支事務局が39年に発展的改組を遂げた華北交通は、中国華北地方で鉄道、バスなどの交通機関の運営を行っていた国策会社で、旅客や資源の輸送を担っていた。南満洲鉄道は、32年に建国した満洲国への理解を国内外から得るためにグラフ誌や写真配信を通じた宣伝活動に力を入れていたが、華北交通のストックフォトも日本の国策を円滑に遂行するための国内外に向けた宣伝用に構築されたものだといえる。