――建築家の卵たちが集う大学の建築学科。東大、京大、早稲田……一流大学だけでなく、全国の大学にそれは設けられているが、その内部はどうなっているのだろうか?また、大学ごとにどんなカラーがあるのか? 研究内容の特徴から卒業生の進路、学生や教授の下半身事情まで、建築学科の素顔を暴いていきたい。
『建築家になるには』(ぺりかん社)
デザイナーと並んでメディアでもしばしば取り上げられる建築家。日本建築士会連合会が公表する一級建築士の登録者数は、35万5921名(平成25年度下半期現在)だという。その登竜門となるのが大学の建築学科だ。そこに入学すると、建築史、環境工学、建築計画、建築構造といった講義を受けたり、建築設計製図の演習をしたりすることに。学部生として4年間を過ごしてから大学院へ進学する割合が多いが、その後、世間的にも名の知られる建築家となるのはほんの一握り。建築家個人の作家性が強いアトリエ系建築設計事務所で働いた後、独立して自らの設計事務所を構えるだけでなく、清水建設や竹中工務店といったゼネコン、日建設計や日本設計といった組織系建築設計事務所、ハウスメーカー、ディベロッパー、官公庁などに就職したり、大学に残って研究者の道に進んだりと、進路はさまざまだ。
そんな建築学科のある大学は、日本全国に現在100以上存在。その中で「トップレベルの大学を5つ挙げるなら、東京大学、京都大学、東京藝術大学、東京工業大学、早稲田大学あたりでしょうか」と建築史家の倉方俊輔氏は話す。
まず東大の建築学科は、丹下健三に槇文彦、黒川紀章、磯崎新、伊東豊雄、隈研吾といった建築家を輩出したが、やはり国内最高峰の建築スクールなのか?
「基本的に学歴は、建築家として名が知られる上で関係ありません。槇文彦が卒業した50年代あたりまでは、建築学科のある大学が少なかったので東大出身の有名建築家が多いですが、いろんな大学に建築学科ができてからは、出身大学も分散傾向に。ただ建築の設計は、クライアントから依頼されて、複雑な要件をデザインにまとめ上げるもの。絵が上手いといったこと以上に、依頼を受けるコネと、地頭の良さ、決断できる自信が効いてくる。ですから、結果的にトップレベルの建築学科の卒業生が有利にはなります。そして、東大がそうした三拍子がもっとも揃いやすいのは確か。ほかの建築学科に比べると圧倒的に歴史が古く、長く社会の中枢を担ったこともあり、やはり学生にも先生にも『社会に役立つ建築を生み出さなければ』という意識は流れている。そのため東大卒の建築家は、良く言えば社会性があり、悪く言えば時流に流されやすいかもしれません」(倉方氏)