――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!
『玉置浩二★幸せになるために生まれてきたんだから』(イースト・プレス)
コンサートで観客に向かい「嫌なら帰れ!」と怒った沢田研二の話が話題になっている。
音楽関係者によれば、「沢田が途中のトークタイムにイスラム国の人質事件に触れ、『日本の将来を憂うのではなく自分自身の頭と心で考えなければなりません』と難しい話を始めたのです。すると一部のファンから『歌って!』という声が出た。沢田はこの言葉にキレたかのように『黙っとれ』と言い返した。国民最大関心事の事件とはいえ、果たして、コンサートの会話としてふさわしかったのか疑問が残る。ファンの歌ってほしい気持ちもわかりますが、話を折られた歌手の気持ちも理解できる」という。
周知の通り、沢田は1960年代に「ザ・タイガース」のボーカルとしてグループサウンド時代の頂点に立ち、ソロに転向後も歌手として一時代を築いた。今もなお根強いファンは多く、ソロでコンサートを満席にできるほどの集客力を誇る。
「ビジュアル系バンドなど、今の芸能界なら化粧したり派手な衣装を着たりする男性歌手は珍しくありませんが、沢田はその先駆者的な歌手で、化粧やシースルーの服を着て歌っていた。“男のくせに”と批判的な声も出ましたが、逆にそれが沢田の魅力でもあった。そんな昔のイメージからしたら、今回の発言は信じられないと思いますが、沢田の本質は今の発言にあるように、本当は軟派ではなく典型的な“硬派”な男です。男気があってケンカ早い。芸能界でケンカをさせたらベスト3に入るほど強いと言われているほどです」(旧知の芸能関係者)
芸能人はあくまでもイメージを売る商売。その典型がアイドル。元芸能プロ幹部が話す。
「どんなイメージで売るかを考え、衣装からヘアスタイルまで演出する。さらに日頃の言動まで指導する。ビジュアル的なものはなんとでもなるが、難しいのが表情と言動。例えば、元ヤンキーだった子なんかもいるから、ヤンキーとわからないように指導する。表情や言動は長年、培ってきたものですから、ついつい本質が出てしまうもの。目つきが悪くなったり、思わず本音で喋ってしまったりする。イメージが定着してある程度売れれば、元ヤンだろうとあまり影響はないけど、売れる前だとかなりのダメージになる」
実際、女性アイドルの中には「楽屋で胡坐をかきタバコをふかしていた」「ケーキなど甘いものが好きと言っていた子がお酒を飲んでいた」というエピソードは枚挙に暇がない。
こんな場面が発覚すれば、アイドルにとっては死活問題。日頃からアイドルらしいイメージを保つことが大切になるという。
「作られたイメージに我慢できないと AKB48のメンバーのように禁止されている恋愛に走ったり、深夜まで飲み歩いたりしてしまう。アイドルは強制的に束縛された世界で生活しなければならない。結局、辞める子は我慢できなかった子が多い。アイドルから一転、AV女優になったりするのは転落の象徴と言われますが、案外、AVのほうが性に合っていて、生き生きと活動していたりするものです」(前出)
アイドルでなくとも歌のイメージで自己演出するケースもある。「クールファイブ」のボーカルだった前川清や「安全地帯」の玉置浩二がいい例である。
「2人ともムード歌謡のボーカリストとして歌のうまさと雰囲気で人気を博した。当時は感情を込めて歌うだけで、口数は少なかった。今の2人は芸人よりも面白いくらいよく喋りますが、これが2人の本質。彼らは本来、お喋りで面白い男なんですが、ムード歌謡で別れの歌なんかを歌うボーカルがペラペラ喋ってはイメージが狂う。口数少なくしていたのは演技で、無口な男を演じていただけです。今は演じる必要がなくなって、のびのびと仕事をしているように見えます」(音楽関係者)
今の沢田も前川のようにすべての束縛が外れ、本音で自由に活動しているように見える。それが今回の発言にもつながったのかもしれない。昨年3月、毎日新聞のインタビューで沢田はこんな発言をしている。「好感度ランキングがやたらと大事にされて、今の芸能人はみんなが“いい人”に見られたい症候群になっている。こういう雰囲気が嫌い」
アイドルは「好感度」がもっとも大切とも言われる。それが人気につながり、CMなどの付加価値も生む。66歳になった元アイドル歌手の沢田。彼のように本音で活動する芸能人がもっとたくさん出てきたら芸能界はもっと面白くなるだろう。
ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母親が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。